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人財立国論

一人ひとりがチャレンジできる社会を目指して


経済産業省
鈴木 隆史  大辻 義弘  守本 憲弘
坂田 一郎  松山 泰浩  深宮 智央  編著

発行 2007年 1月 23日 四六判 280ページ

本体 1,333円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2766-4

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■はじめに

ヒトの育成こそが将来の成長への鍵
今後我が国は人口減少社会に突入していきます。グローバルな規模での競争が激化していく中で、我が国の企業が国際競争に勝ち抜き、豊かな経済社会を実現していくことは重要な課題ですが、あらゆる生産活動の基礎となる人材が少なくなっていくということは、成長を成し遂げる上で大きな制約と言わざるを得ません。こうした中で、敢えてその逆風をついて、我が国全体としての富を拡大し、「新しい成長」を実現していくには何が必要か、限られた資源の中で何をすべきか、このことは今後の経済社会政策を考えていく上で重要な課題です。このため、経済産業省では、2006年1月から経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会に設けられた新成長政策部会(部会長:西室泰三鞄月ナ相談役)において、こうした政策課題に関する審議を頂き、同年6月9日に最終報告書を取りまとめました。

「新経済成長戦略」――――、これが、この報告書のタイトルです。この報告書の中では、我が国経済社会の10年先のあるべき姿を模索し、その時点での新しい形の成長を実現するために、国全体で今後取っていくべき経済・産業政策の方向性とその具体的内容が、多様な観点から提言されています。その提言の中で、とりわけ重視しているのが、他でもなく、「ヒト」の力の強化です。「企業はヒトなり」、そして「国家はヒトなり」。昔から、言い古されてきている言葉ですが、個別の経済活動においても、さらには経済活動をもっとマクロ的な視点で見ても、その基本となる担い手が人的資源、ヒトであることは紛れもないことです。個々人の能力を如何に高め、そしてその能力を如何に遺憾なく発揮させるか、というのは、古今東西問わず永遠の命題です。そして、社会全体の少子高齢化の進行に直面する今こそ、こうした人的資源の生産性、即ち、「ヒト」の力の強化こそが、我が国経済社会の発展の鍵と考えます。 人材育成の重要性を表す古事に、小泉首相の所信表明演説(平成13年5月7日)でも取り上げられた「米百俵」の話があります。これは、明治初期の時代の越後国長岡(現在の新潟県長岡市)での話になります。戊辰戦争が起こり、長岡城下は焼け野原となった際、支藩の三根山藩(現在の新潟県西蒲原郡巻町)からその見舞いとして百俵の米が贈られてきたのだそうです。それを受けて、当時の長岡藩の大参事・小林虎三郎は「国がおこるのもまちが栄えるのも、ことごとく人にある。食えないからこそ学校を建て、人物を養成するのだ。」と主張し、贈られてきた百俵の米を藩士に配分せずに売却して、その代金を国漢学校の資金として活用したのだそうです。この小林虎三郎の行動こそ、今我々が、将来の世代に向けて真剣に取り組まなければならない課題を教えています。
経済成長を目指すために、目先のことだけにとらわれては、決していけない。将来の世代を担う人材のために、彼らへの「投資」を怠ってはいけないのです。

新経済成長戦略と「人財立国」 新経済成長戦略では、「人(ヒト)」の育成の重要性を、「人財力のイノベーション」や「人財立国の実現」というタイトルを掲げて、政策の柱に位置づけています。「人財」という文字使いをすると、「おやっ」と思われる方もいるかもしれませんが、そこには、「人(ヒト)こそが、我が国の財(タカラ)である」という強い思いを、メッセージとして込めているのです。 ジンザイ(人材)を「人財」と書くと、現在の学校の試験では「間違い」とされるでしょう。さらには、「財」という文字を用いることで、人間を、資本財と同様に「財産」として扱うことでは「人をばかにしているのではないか」といった批判もあるかもしれません。政府の報告書が、そうした間違った漢字を使っていいのか、そういう御指摘も頂くかもしれません。
しかしながら、我々からすれば無論そういったことではない。この“財”の字には「タカラ」という意味を込めているのです。例えば材料の“材”として、素材の一つとしてヒトを考えるのではなく、人(ヒト)を“財(タカラ)”と考えて、どうやって大事にし、そして育て上げていくか、こういう考え方を社会全体で共有していきたい。この思想を、国民・社会全体で共有し、企業も、学校も、家庭も、地域も、社会全体が、この思いを共有しながら、昨今の社会全体の構造的な変革に即応した形で、もう一度「ヒトづくり」の枠組みを作り直し、新しい人材育成の形を構築していかなければいけない。そう考えているのです。

人材育成と新しい成長に向けて
「新経済成長戦略」は経済産業省が打ち出した経済成長ビジョンではありますが、その後、同戦略をベースに、政府全体、さらには与党も一体となって、「経済成長戦略大綱」がとりまとめられました。具体的な試算としても、これらの政策を着実に実行することにより、実質GDP(国内総生産)で年率2.2%以上の成長を達成することを目標にし、その実現に向けた道筋を描いています。  経済産業省の策定した「新経済成長戦略」にせよ、政府全体の成長戦略である「経済成長戦略大綱」にせよ、資源の乏しい我が国にとって、人材の育成こそ、成長戦略の中核であることには変わりありません。人材育成を大きな柱の一つとした「新たな日本型成長モデル」を作っていく必要があるのです。
ここからは、新しい時代の成長に向けた人材育成として、今我々が注視しなければならない現状の課題は何なのか、そしてその課題に対して、どのようにして取り組んでいくべきなのか、説明していきたいと思います。

本文の構成は以下の通りです。

第1章 いま、「人財立国」が提唱される背景を、我が国の人材育成システムを巡る状況変化を、「個人」「家庭や地域」「企業」「教育機関」といった視点から概観します。

第2章 第1章での背景分析を踏まえて、今後の我が国の人材育成システムをどうデザインし直すべきか、その方向性を考えます。産学連携による実践的教育、人材育成パスの柔軟化と複線化、世界的な優秀な人材の流れ(ブレイン・サイクル)をつかむ、の3つがキーワードです。

第3章 個々人が、社会に出る前にその能力を十分に伸ばし、学校から社会へとスムーズに移れるよう、産業界や地域と連携した人材育成の在り方について考えます。

第4章 社会に出た後、個人が最大限に能力を発揮していくためには、何が必要なのか。「企業の人材マネジメント」と「社会に求められる基礎的な力」の2点から考えます。

第5章 いま、世界では人材獲得競争が激しさを増しています。その中で、我が国は、どうやって優秀な人材を引き込み、国の発展につなげていくのか、その方策を考えます。

第6章 国内外には、“人作り”に関わる先進事例が数多く存在します。我が国の“人作り”をよりよいものにするため、そこから多くのヒントを得たいと思います。

我々は、常に現場から発想することが重要だと考えています。本著を執筆するにあたりましては、数多くの現場に取材を行い、生の声をお聞かせ頂きました。インタビューや資料の提供にご協力頂きました方々に、厚く御礼申し上げます。


主要目次
はじめに
  ヒトの育成こそが将来の成長への鍵/新経済成長戦略と「人財立国」/
  人材育成と新しい成長に向けて


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第1章 人作り新時代
      −人材育成システムをどうやって構築するか−
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第一節 いま、なぜ「人財立国」か
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  本当に経済社会で求められる人材を育成できているのか/個人」―その意識と能力の変化/
  「家庭」と「地域」―衰える教育機能/「企業」―丸抱え人材育成の終焉/
  「教育機関」−実践的な教育への変革/残された十年


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第二節 いま、人作りに迫り来る危機
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  一 工業化時代を支えたシステムの制度疲労
     イ 企業と学校の従来の役割分担を考え直す
         失われた十五年とOJTのほころび/産業ニーズから離れた大学教育/
         産業界と学校との教育における連携
     ロ 労働人口の構造的な限界
         ベテランの技能消失の危機/若者の就業意識の危機1−七・五・三問題/
         若者の就業意識の危機2−ニート・フリーターの増加
     ハ モノ作り離れの危機
         モノ作りの専門教育の復活/理科離れが止まらない/
         楽しい魅力的な理科教育を創るために

  二 「社会人基礎力」の低下
      「最近の若者は・・・」、どの時代でも聞かれますが、今回ばかりは。/
      なぜこんなことになったのか。もうダメなのでしょうか。/
      社会人基礎力こそ企業が求めているもの/業種や企業で、求める基礎力はハッキリと違う

  三 人作りを競う国際社会
      日本の教育機関は未だに鎖国状態?/世界の人材が集まることで、人材の質も高まる


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第三節 世界に目を向けると
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  米国のパルミザーノ報告書/改革競争に乗り遅れないように


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第2章 人材育成システム改革の方向性
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第一節 これまでの政策対応の振り返りと今後の方向性
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  一 ジョブカフェ〜新たな就職の仕組み〜

  二 事後的救済から予防へ 〜人材育成政策の強化〜
     フリーター急増の背景/社会が求める人材像の変化/学生の混乱とミスマッチの原因

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第二節 人材育成システム改革に向けて、何が大切か
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  一 産業界や地域との連携による実践的な人材育成
     イ モノ作り、観光、金融等のプロフェッショナルを育てる
     ロ 工業高校、高専で実践的な人材を育成する
     ハ 子供の頃から仕事に触れる
     ニ 理科好きを育てる

  二 柔軟な人材育成システム
     イ 人材重視型マネジメントを目指す
     ロ 社会人基礎力を鍛える
     ハ 切れ目なく学ぶ

  三 世界のブレイン・サイクルの取り込み
     イ アジア人財資金構想
     ロ 世界を目指し、アジアと共に人作りをする


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第3章 産業界や地域との連携による実践的な人材育成
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第一節 モノ作り、観光、金融等のプロフェッショナルを育てる
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  モノ作り専門職大学院、人材育成パスの複線化/観光分野における地域プロデューサー育成
  金融工学等の高度金融人材育成/経営、技術経営、医療経営など様々な人材育成

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第二節 工業高校、高専等で実践的な人材を育成する
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  工業高等専門学校等を活用した中小企業エンジニア育成/
  工業高等学校での実践的な人材の育成/大学と中小企業の連携

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第三節 子供の頃からたくさんの仕事、たくさんの大人に触れる
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  地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト/たくさんの大人と斜めの関係をつくる

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第四節 理科好きを育てる
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  理科実験教室プロジェクト


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第4章 柔軟な人材育成システム
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第一節 人材重視型マネジメントを目指す
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  九〇年代の人材マネジメント改革の問題点/人材の成長を中心に据えたマネジメント/
  多様な人材の融合と能力発揮

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第二節 社会人基礎力を鍛える
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  社会人基礎力という考え方を打ち出した背景/かつてと何が変わったのか/
  社会人基礎力の明確化/社会人基礎力を共通言語にする


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第5章 世界のブレイン・サイクルの取り込み
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第一節 アジア人財資金構想
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  世界のブレイン・サイクルに乗り遅れる日本/アジア人財資金構想/
  グローバル人材マネジメント研究会/

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第二節 世界を目指し、アジアと共に人作りをする
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  世界的な研究拠点を育てる/アジアの人材育成に協力する/アジアとともに人材を育てる


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第6章 先進事例から学ぶ人作り
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第一節 我が国での改革の先進事例(京都モデル)
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  縮む家族や地域コミュニティの機能、変化の兆し/京都モデル/産学連携の先進地としての京都/
  大学をネットワークする/京都の奇跡/公教育復活の道のり/改革の四つの成功要因/
  学校ごとの特色ある取り組み/地域・産業界・学校の連携による成果

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第二節 世界の現場から学ぶ
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  日本の大学における人材育成の国際評価の低さ/学部・学科の改編の柔軟性を高める/
  職業プロフェッショナル向けの大学院を作る/米国における人材育成パスの柔軟性/
  問題発見と解決能力を鍛える/国家戦略としての人材育成を考える/
  米国における社会人基礎力の強化の試み/英国のサイエンスパーク/
  英国のギャップイヤー制度


主な参考文献
(参考1)「新経済成長戦略」のヒト関連部分
(参考2)「人材マネジメントに関する研究会」報告(概要)

【コラム1−1】ユニバーサル技能五輪国際大会(日本のモノ作り力を見せつけろ!)
【コラム2−1】ジョブカフェ大阪(若者と地元企業を結びつける地域ぐるみの就職支援)
【コラム2−2】ジョブカフェ山口(9大学との連携、地域密着型サービス)
【コラム3−1】岩手大学大学院工学研究科金型・鋳造工学専攻(日本初のモノ作り大学院)
【コラム3−2】東京大学技術経営戦略学専攻(技術と経営の両方がわかるプロを育てる)
【コラム3−3】病院経営者向けのビジネススクール(「医療経営」)
【コラム3−4】デジタルハリウッド大学院(デジタルコンテンツ分野最高峰の教育機関)
【コラム3−5】東京大学原子力大学院(「原子力のプロ」を育成)
【コラム3−6】東京都立産業技術高等専門学校(9年間一貫したモノ作り人材育成)
【コラム3−7】津山高専(地場産業で活躍する人材の育成)
【コラム3−8】東京都立六郷工科高等学校(「デュアルシステム」)
【コラム3−9】東京理科大学中小企業講座(モノ作りの「心」を学生にお届け)
【コラム3−10】佐賀県鳳雛塾(商店街を活用したキャリア教育)
【コラム3−11】杉並区和田中学校(教員だけが先生ではない!)
【コラム3−12】福井大学教育学部(理科好きを育てる教育プログラム開発)
【コラム4−1】小林製薬(「信賞必誉制度」)
【コラム4−2】GAPジャパン(正社員転換のパス)
【コラム4−3】松下電器(ダイバーシティマネジメント)
【コラム4−4】金沢工業大学(「自ら考え行動する技術者」の育成)
【コラム5−1】留学生を鍛える立命館アジア太平洋大学
【コラム5−2】神戸医療産業都市(世界的なライフサイエンスの研究拠点を目指す)
【コラム5−3】外国人研修生・技能実習生の学んだこと
【コラム5−4】日本留学生OBが作るタイ日工科大学
【コラム6−1】「京都こどもモノ作り塾」(仮称)
【コラム6−2】京都市立堀川高等学校(全国に教育改革の旋風を巻き起こした「堀川の奇跡」)
【コラム6−3】京都市立西京高等学校(商業高校の改革)
【コラム6−4】市立伏見・洛陽工業高校(地元産業界との連携による市立工業高校改革)
【コラム6−5】御所南小学校(地域に支えられるコミュニティスクール)
【コラム6−6】京都御池中学校(「京都独自のコミュニティスクール」)
【コラム6−7】京都スチューデントシティ/ファイナンスパーク
【コラム6−8】京都市立総合養護学校版「デュアルシステム」の取組



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