平成21年4月22日、鉱工業技術研究組合法を技術研究組合法に改正する法案が可決・成立し、新たな研究開発パートナーシップ制度(技術研究組合制度)が創設されました。
技術研究組合の前身である鉱工業技術研究組合制度は昭和36年に創設された制度であり、超LSI技術研究組合等が有名ですが、制度の認知度が低く、あまり活用されていませんでした。
しかし、昨今技術が高度化・複雑化する中でオープンイノベーションに対する期待が高まり、共同研究を行う組織である鉱工業技術研究組合制度の利点が見直されることになりました。
今回の改正により、その名称を「技術研究組合」に変更し、旧来からの利点に加えて、事業家を円滑にするための制度にするための改正が行われました。
旧来の技術研究組合の主な問題点と改正による改善点は次のとおりです。
旧来の技術研究組合の問題点
(1)研究成果をそのまま共同で実用化することができず、技術研究組合は解散し、研究成果は参加企業が持ち帰らなければならない。
(2)組織の分割ができないので、研究成果の得られた一部について実用化することや、「選択と集中」により研究ポートフォリオを最適化することができない。
(3)大学や独立行政法人産業技術総合研究所等の公的研究機関は構成員として参加できず、これらの者との共同研究に技術研究組合を利用できない。
(4)3者以上でなければ設立できず、共同研究を2者で行う場合に利用できない。また、創立総会を開催し、その公告をしなければならない。
(5)試験研究の対象が鉱工業の生産技術に限定され、農業や医療等、鉱工業に含まれない産業に利用される技術に関する試験研究が実施できない
改正による改善点
(1)研究組合自身が株式会社等に組織変更して、研究成果をそのまま共同で実用化できるようになった。
(2)新設分割により会社を設立して、研究成果が得られたものから順次実用化することができることになった。また、新設分割により研究組合を設立して、研究デーマごとに組織を分けることができるようになった。
(3)大学や独立行政法人産業技術総合研究所等の公的研究機関が構成員として参加できるようになり、企業は大学や独立行政法人産業技術総合研究所等との共同研究に研究組合を利用できるようになった。
(4)2者でも研究組合を設立できるようになり、共同研究を2者で行う場合にも制度が利用できるようになった。また、創立総会が廃止され、その公告をする必要がなくなり、共同研究を秘密にしておきたい場合に利用し易くなった。
(5)試験研究の対象が産業活動において利用される技術一般に拡大され、農業や医療、サービス等に利用される技術に関する試験研究に利用できるようになった。
今後は、技術研究組合制度が大企業だけでなく、中小ベンチャー企業や大学・公的研究機関により、幅広く活用されることが期待されます。また、事業化の準備組織や大学初ベンチャーとしての活用が考えられます。
本書は、技術研究組合法及び大学等公的研究機関の責務等を規定する産業技術力強化法(平成21年度改正部分)について詳細な解説を行っています。
是非、ご一読ください。