企業統合と知的財産

長期化する不況の中で、我が国の多くの企業がその存続をかけて事業領域の「選択と集中」や事業再編に取り組んでおり、これに伴いＭ＆Ａ（企業統合）が利用されることも増えてきました。Ｍ＆Ａにおいて必須のプロセスである、デューデリジェンス（買収監査）において、対象資産としての「知的財産」に注目が集まってきています。

ただし、知的財産のデューデリジェンスを行う局面はＭ＆Ａに限られるものではありません。たとえば、事業会社における知的財産マネジメントの一環として、自社および他社が保有する知的財産のデューデリジェンスを行うことにより、研究開発、特許網の構築、ライセンスポリシーの策定など、知的財産の創造・権利化・活用の各局面における戦略の策定に役立てる場合もありますし、場合によってはＭ＆Ａの提案につながることもあります。また、知的財産を担保とする融資や証券化において、原資産の価値を把握するために、ビジネスの特性や将来

収益を重視したデューデリジェンスが欠かせません。

このような状況を背景として、本書では知的財産デューデリジェンスについて、基本的な視点・範囲・プロセス・契約等の視点から簡潔に解説します。

━━━━━━ 一　はじめに ━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━ 二　デューデリジェンスと知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 　Ｍ＆Ａの目的と知的財産　知的財産デューデリジェンスの視点　知財分析のプロセス　Ｍ＆Ａに関連する知的財産リスク ━━━━━━━━━━━━━━ 三　監査対象としての知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━ 　無形資産・知的資産・知的財産　知的財産権・産業財産権　技術的資産の法的保護　特許権　商標権　意匠権　著作権　その他の知的財産権 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 四　法務デューデリジェンスと知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 　対象知的財産の特定・確認　対象知的財産についてのリスク認識　チェンジ・オブ・コントロール条項の確認　法務リスクの管理　スキームの比較　営業秘密の取り扱い ━━━━━━━━━━━━━━━━ 五　知的財産関連の契約条項の検討 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 　表明・保証　誓約　補償　前提条件 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 六　ビジネスデューデリジェンスと知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 　ビジネス上の知的財産の位置づけ　外部環境・内部環境分析と知的財産　統合に伴うシナジー・リスクと知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 七　財務デューデリジェンスと知的財産 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 　収益の源泉としての知的財産　偶発債務の発生リスク　研究開発投資の実績　研究開発型企業の超過収益力 ━━━━━━━━━━━━━━━ 八　会計基準のコンバージェンス ━━━━━━━━━━━━━━━ 　会計基準のコンバージェンスと知的財産　取得原価配分（ＰＰＡ）と知的資産の計上　研究開発の扱い　のれんの償却の可否 ━━━━━━━━━━━ 九　知的財産の価値評価 ━━━━━━━━━━━ 　知的財産デューデリジェンスと価値評価　価値評価の前提　価値評価の分類とその手法　コストアプローチ　マーケットアプローチ　インカムアプローチ ━━━━━━━━ 十　統合プロセス ━━━━━━━━ 　統合プロセスにおける知的財産マネジメント　受入資産の把握　知的財産管理組織・管理ポリシー ━━━━━━━ 十一　おわりに ━━━━━━━ 参考文献著者略歴