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職務発明規定変更及び相当対価算定の法律実務
高橋 淳 著

発行 2014年 5月 9日  A5判 240ページ

本体 2,500円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2939-2

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   はじめに よりイメージ
1 旧法から現行法へ
現行特許法35条は職務発明について規定しており、3 項において従業員等に対して相当対価請求権を認めている。これは大正10年法以来の規律であり、平成16 年改正前の特許法(以下「旧法」)にも同様の規定がある。

この職務発明についての旧法の規律(以下、その司法解釈及び企業の職務発明規定等を含め、「職務発明制度」という)は、オリンパス最高裁判決において企業の職務発明規定に基づく支払額が「相当の対価」に満たない場合、不足額の請求が可能であると判示されたことにより脚光を浴びることとなり、その後、不足額請求を認容する下級審裁判例が多数現れたことから社会的関心を集めるようになった。

このような裁判例の流れに対し、産業界から予測可能性に欠ける等の批判がなされ、これを受けて、旧法35 条は改正されて、相当対価の決定手続を重視する現行法に至っている。

2 現行法の課題
2−1 基準の抽象性
しかし、現行法35条の示す基準は抽象的であり、どのようなプロセスを経た場合に相当対価の決定手続が合理的といえるのか判然としない。この点、特許庁が手続事例集を公表しているが、未だ抽象的であることは否めない。

2−2 実績補償方式の問題点
また、翻ってみると、職務発明制度の問題点は、法の規定のみならず、多くの企業が実績補償方式を採用してしまっている点にある。その原因は定かではないが、職務発明の相当対価の支払いは会社が獲得した利益を発明者にも分配するとの誤った理解に基づくひな形が流布したからではないかと推測される。

この点、職務発明の相当対価の支払いは、利益分配ではなくインセンティブとしての報奨金の支払いであるから、実績補償方式を一括払い方式等に変更することが望ましい。

しかしながら、既存の職務発明規定の変更についてのあるべき手続については殆ど論じられておらず、何らかの指針を示すことが求められている。

3 本書の狙い
そこで、本書においては、導入として現行法の概要等について概観した上、実績補償方式の問題点を分析・検討し、制度設計の基本的視点を提示し、これを前提として、相当対価の算定方式及び対価算定方式について実務的な検討を加える。

そして、就業規則の不利益変更を巡る議論や年金減額訴訟判決なども参照しつつ、職務発明規定の変更手続について可能な限り具体的・実務的に考察する。

また、職務発明制度を現実に運用する際における以下の実務上の問題点について単に検討するだけではなく現実的な解決策を示すように心がけた。

 1 退職者の取扱い
 2 ノウハウの取扱い
 3 無効理由を含有する発明の取扱い
 4 グローバル化対応
 5 出向社員・派遣社員による発明
 6 取締役による発明
 7 消滅時効
 8 変更の遡及適用の可否

さらに、本書の目的に沿う限度で職務発明の相当対価に関する裁判例についても紹介・検討し、必要に応じて改正の方向性についても言及することとする。

なお、本書は、筆者が「知財ぷりずむ」に掲載した論考と経済産業調査会等において実施したセミナーのテキストをベースにしたものである。このセミナーに対する産業界の関心は極めて高く、出席者は延べ100名近くとなるが、本書には、出席者からの質問に触発された考察が多数反映されている。この場を借りて、同セミナーの出席者の方々に感謝するとともに、セミナーを企画し、また、本書の執筆を勧めて頂いた経済産業調査会佐藤 氏に謝意を表することとする。

高橋法律特許事務所 弁護士 高橋淳


主要目次
刊行の狙い
参考文献

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第1章 現行制度の概要
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1 現行制度の概要
2 旧法35条の構造
3 旧法下の裁判例に対する評価
4 現行特許法35条の構造
5 現行特許法35条の特徴
6 特許法35条を巡る誤解
 6−1 旧法35条の趣旨
 6−2 職務発明規定の強行規定性
 6−3 オリンパス最高裁判決の射程範囲
  6−3−1 事実関係
  6−3−2 オリンパス最高裁判決の射程範囲
7 現行法の問題点
8 現行法の解釈論
 8−1 手続重視の思想
 8−2 プロセス審査説
 8−3 自主性尊重説
  8−3−1 自主性尊重説の骨子
  8−3−2 自主性尊重説とプロセス審査説との比較点

━━━━━━━━━━━━
第2章 現行制度の問題点
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1 標準的な相当対価の支払方式
2 実績補償方式の問題点
 2−1 イノベーションに貢献していない
  2−1−1 インセンティブ・モデルと成果主義
  2−1−2 成果主義の導入と批判
  2−1−3 「発明」の動機付け
 2−2 実績補償方式と所得格差
 2−3 リスクとリターンの歪み
 2−4 他の従業員との公平
 2−5 他の発明者との公平
 2−6 基礎研究の軽視
 2−7 「和」の精神の崩壊
 2−8 過大な事務負担
3 イノベーションの特質に合致しない
 3−1 偶然性に左右される
 3−2 成功の後に失敗あり

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第3章 制度設計の基本的視点
━━━━━━━━━━━━━━
1 会社の実情にマッチする制度設計
2 過大な労力・負荷の削減
 2−1 具体的算定プロセスのシンプル化
 2−2 裁判例の見解との整合性
3 対価算定手続
 3−1 評価と検証
 3−2 不服申立手続における留意点
  3−2−1 構成員
  3−2−2 評価と検証
  3−2−3 クレーム対応
4 職務発明規定整備と職務発明訴訟
5 発明者の認定
 5−1 基本的考え方
 5−2 裁判例の傾向
6 相当対価請求権の趣旨
 6−1 利益配分説vsインセンティブ説
 6−2 検討
7 相当対価請求権の法的性質
 7−1 発生根拠
 7−2 内実
第4章相当対価の算定方式
1 算定方式
2 実績補償方式
 2−1 内容
 2−2 出願補償金・登録補償金の位置づけ
 2−3 上限の設定
 2−4 実績補償方式に基づく計算
  2−4−1 自己実施の場合の計算方法
  2−4−2 実施許諾(ライセンス)の場合
  2−4−3 併用型の場合
 2−5 「実績」の算定期間
 2−6 逆累進方式
  2−6−1 貢献度の観点からのアプローチ
  2−6−2 インセンティブの観点からのアプローチ
  2−6−3 事業化促進の観点からのアプローチ
 2−7 算定式の例
3 一括払い方式
 3−1 出願時一括払い方式
  3−1−1 適法性
  3−1−2 算定方法
 3−2 登録時一括払い方式
 3−3 実績考慮型一括払い方式
4 一括払いプラス実績による調整方式
 4−1 内容
 4−2 調整方式
5 一括払い方式のインセンティブとしての有益性
 5−1 ドイツの実情
 5−2 行動経済学・労働経済学の知見
6 発明の価値評価の限界

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第5章 職務発明規定の変更手続
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1 職務発明規定の法的性質
2 職務発明規定の変更要件
 2−1 特許法35条4項が規定する合理性
 2−2 就業規則の不利益変更
  2−2−1 労働契約法
  2−2−2 判例法理と法の手続化
  2−2−3 最高裁判決
   2−2−3−1 第四銀行事件判決
   2−2−3−2 みちのく銀行事件判決
   2−2−3−3 羽後銀行事件判決
  2−2−4 ノイズ研究所事件判決
 2−3 労働協約による労働条件の不利益変更
  2−3−1 労働協約の意義、方式等
  2−3−2 労働協約による労働条件の不利益変更の可否
3 推奨手続
 3−1 4項の文言
 3−2 推奨手続を示す意義
 3−3 開示
  3−3−1 開示の方法
  3−3−2 基準の社外への公表
 3−4 説明の内容
 3−5 説明の方法
 3−6 説明会のメンバー
 3−7 デュープロセス
 3−8 所要時間
 3−9 質疑応答
 3−11 同意の取得
 3−11 代表者・代理人との協議
 3−12 労働基準法との関係
4 従業員の納得を得るポイント
 4−1 変更の必要性の十分かつ誠実な説明
 4−2 代償措置の採用
 4−3 相当対価の意味合い
5 少数反対者に対する対応
 5−1 対応方法(配置転換又は黙示の同意)
 5−2 配置転換についての考え方
6 新入社員・中途採用社員・退職者との協議
 6−1新入社員・中途採用社員との協議
 6−2 退職者との協議
7 記録保管
8 実績補償方式から一括払い方式への変更
 8−1 原則としての一括払い方式
 8−2 検討例

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第6章 年金減額訴訟の教訓
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1 はじめに
2 裁判例
 2−1 松下年金減額事件判決
 2−2 事案の概要
 2−3 主たる争点
 2−4 判断
 2−5 りそな年金事件判決
  2−5−1 事案の概要
  2−5ー2 主たる争点
  2−5−3 判断
3 教訓
 3−1 松下年金減額訴訟
 3−2 りそな年金事件判決

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第7章 実務的問題点・留意点
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1 退職者の取り扱い
 1−1 追跡を不要とする措置
 1−2 誓約書の取得
 1−3 退職時における清算
 1−4 職務発明規定変更時の協議の対象となるか
2 ノウハウ(未出願発明)の取り扱い
 2−1 営業秘密として管理する場合
 2−2 営業秘密として管理しない場合
3 無効理由を包含する発明
 3−1 基本的考え方
 3−2 自己実施の場合
 3−3 実施許諾の場合
4 グローバル化対応
 4−1 基本的考え方
 4−2 対応
5 出向社員による発明
 5−1 特許法35条における「使用者等」
  5−1−1 「出向」の意味
  5−1−2 「使用者等」の意味
 5−2 職務発明規定の適用
6 取締役による職務発明
 6−1 支払いの必要性
 6−2 利益相反取引
  6−2−1 利益相反取引該当性
  6−2−2 承認なき譲渡の効果
7 変更の遡及適用の可否
 7−1 問題点
 7−2 解決策
  7−2−1 清算金の支払い等による個別合意
  7−2−2 変更を予定する「権利」(弱い権利)説
  7−2−3 猶予期間内の権利不行使による失権
8 事情変更手続規定
9 消滅時効
 9−1 消滅時効期間
 9−2 消滅時効の起算点
 9−3 時効中断(債務の承認)
  9−3−1 支払金員の性質
  9−3−2 不足額の存在の認識
 9−4 援用権の喪失
10 共同発明者間の貢献度の認定

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第8章 相当対価算定に関する裁判例の基本的考え方
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1 相当対価算定の基本的考え方
 1−1 「使用者等の受けるべき利益」
 1−2 自己実施の場合
 1−3 第三者にライセンスをした場合
 1−4 自己実施+ライセンスの場合
2 使用者の貢献度
3 近時の裁判例
 3−1 ハルナール事件判決
  3−1−1 事案の概要
  3−1−2 主たる争点
  3−1−3 判断
  3−1−4 検討
 3−2 アルガトロバン事件判決
  3−2−1 事案の概要
  3−2−2 主たる争点
  3−2−3 判断
  3−2−4 検討
 3−3 ラベルライター事件判決
  3−3−1 事案の概要
  3−3−2 主たる争点
  3−3−3 判断
  3−3−4 検討
 3−4 ゴースト像除去走査光学系事件判決
  3−4−1 事案の概要
  3−4−2 主たる争点
  3−4−3 判断
  3−4−4 検討
 3−5 東京精密事件判決
  3−5−1 本判決の概要
  3−5−2 検討
 3−6 テフロン事件判決
  3−6−1 本判決の概要
  3−6−2 検討
 3−7 NECトーキン事件判決
  3−7−1 事案の概要
  3−7−2 本判決の概要
  3−7−3 検討

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書式例
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 職務発明規定(一括支払型)
 職務発明規定(実績補償型)
 同意書・委任状



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