中小ものづくり高度化法の解説

■刊行にあたって（抜粋）

　我が国経済の基幹産業である製造業においては、モノ作りの基盤となる優れた技術を持った中小企業群の存在が競争力の源泉となっています。これら技術力の高いモノ作り中小企業は、最終製品を製造する大企業と緊密な意見交換を通じて、市場ニーズを的確に捉え、新たな高付加価値製品を生み出してきました。最近では、こうした国内のモノ作り中小企業群の存在意義が再認識されており、一部の最終製品を製造する大企業では、国内を立地拠点として見直す動きが見受けられます。

　他方、企業間の取引関係は、従来の固定的な系列取引から目的に応じた柔軟な取引関係へと変化してきているため、優れた基盤技術を有するモノ作り中小企業にとっては、最終製品を製造する企業の求める技術開発の方向性を見定めることが困難になってきており、技術開発の投資リスクを高めています。

　また、自動車などの高付加価値製品の国際競争力の維持・強化と、情報家電やロボットなどの新産業の創出を図ることは、我が国経済の持続的な発展を実現する上で大変重要であります。このためには、優れた基盤的な技術を有するモノ作り中小企業が、市場ニーズを踏まえた、より高度な技術開発に果敢に挑戦して行くことを必要としています。しかしながら、新製品の開発などの積極的な提案を行う能力を備えた中小企業であっても、資金や人材等の経営資源の確保に困難さを抱えています。

　こうした認識のもと、本年４月に、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」を制定し、予算面や金融面等の多岐にわたる支援策を講じることとしました。６月の本法施行に伴い、我が国製造業の国際競争力の強化等に必要不可欠である鋳造やめっきなどの重要なモノ作りの基盤となる技術を指定し、個々の技術ごとに、最終製品を製造する企業のニーズを体系的に整理した上で、中小企業が目指すべき技術開発の方向性を示す将来ビジョンを「指針」として取りまとめ、広く公表しています。当該指針は、数多くの企業や学識経験者の方々の叡智を結集して策定したものであり、技術開発の羅針盤として、多方面で有効活用されることを期待しております。また、指定する技術や指針については、適宜適切に見直していくこととしています。

　本書は、「中小ものづくり高度化法」についての立案の背景、施策の内容等を分かりやすく解説したものであります。本書が、モノ作り基盤技術の高度化に向けた研究開発に果敢に取り組もうとする中小企業の方々を始めとする関係各位において、本法をご理解いただく一助となることを念願する次第であります。