かつて韓国と日本は近くて遠い国と言われたこともあったが、現在では文字どおり近くて近い国であり、人物・文化・産業の交流も盛んである。
特許の世界においても、両国には密接な関係がある。日本はかなり以前から特許大国であったが、2006年度で、韓国の産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の出願は年間40万件に達する勢いであり、特許だけでも16万件を超えている。その出願数は世界でも第4位の知財大国となっており、外国からの出願としては日本からのものが圧倒的に多いという現状である。韓国産業の急速な発展とともに、日本からの韓国への出願も急増しており、また韓国から日本への出願も増えている。今や、日本にとっても韓国にとっても、お互いの特許制度を深く知ることは、極めて重要なこととなりつつある。
このような状況の下で、韓国から多くの特許専門家が日本に留学しているが、康應善氏はその一人である。康氏は1995年から2年半にわたり、東京大学の大学院に在籍し、私の指導の下で特許法の研究を続けた。当時の康氏は特許庁の役人であったが、留学生の模範となるような勤勉な勉学態度に感銘を受けたことを覚えている。また日本語も堪能であり、弁理士に転じた現在、韓国でも有数の弁理士として活躍中と聞いている。
また、酒井宏明氏は、酒井国際特許事務所を所長として自ら経営する傍ら、1996年から数年間、東京大学の大学院修士課程・博士課程に在籍し、私の指導の下で特許法の研究を続け、またその卒業後も東北大学の大学院工学研究科で学び、工学博士の称号も取得している。その意味から、酒井氏は、まさに技術と法の双方に精通した弁理士ということができよう。
日本と韓国で大活躍の両名を引き合わせたのが私の研究室であった。私の下で両名の運命的な出会いがあり、この両名のコラボレーションとして本書が誕生したということには感慨深いものがある。韓国の特許制度について少しでも知見を
広めたいと考えておられる方に、是非本書を推薦したい。
2007年8月29日
東京大学教授 中山信弘