「成功」の意味、そしてこの本をどんな人たちに読んで欲しいか
ビジネスに成功するのは、正しい根拠に基づいて正しいことを、正しい時に行いさえすれば、とても容易なことだ。そう言ってしまえばそれまでだが、いざ実行するとなるととてもではないが一筋縄では行かない。
数年前、アメリカの新聞、USA Todayの記事に、新興企業の98%が5年以内に破綻していると報じていた。最近の経営環境の下では、間違いなくもっとひどい状況であろう。リーマンショック後の、国家的経済危機の間、大企業も非常に苦しんだ。これらの企業は間違った理由で間違ったことをやってしまったのかも知れないし、さもなければ実行する時期を間違ったのかもしれない。いずれにせよ、経営に成功するのは、決して言う程簡単ではない。
私にとって、ビジネスの成功とは、とりわけ利益を重視する立場で、会社の目標をきちんと達成することを意味する。私は、私の経験と観察に基づいて、読者の皆さんにとっても役に立つと思える「原理・原則」をこの本にまとめてみた。私が念頭に置いた読者は、CEO、社長、副社長、役員といった経営・管理者で、組織の大小に拘わらず、損益責任を担っている方々である。多くの逸話や経験談を入れたので、身の上話や一代記に興味ある人たちにとっては、実業の世界での追想録と映るかも知れない。
本書に述べた原理や原則は、非営利団体にも同じように当てはまる。何故なら、非営利団体の経営においても、最終損益を厳しく見なければならないからである。Skookumは、障害者や弱者を対象として雇用を創出し、成功を収めた非営利団体だが、その会長を引き受けた際、本書に掲げた原理原則を経営指針として、業績を劇的に改善することに成功した。NPO(非営利団体)Skookumの成果については、第7章に詳しく説明している。
本書を最初は、他人の話のように客観的に書いてみたが、私を知らない読者にとっては何か尊大ぶった話のように受けとられたようだった。そのため、当事者の立場で主観的に、自分の話として書き直すことにした。その結果、「これが実際に行ったことである。その理由はこうで、あるいはこのように人から学び、そしてこのような結果となった」と、話はとても簡潔になった。私が自ら手掛け、そして失敗した製品や事業の例も含まれている。
本書の対象は多忙な経営幹部の皆さんである。そのため短時間で読めるように簡潔を心掛けた。各章の終わりに要点と主要な戦略をまとめ、通読用にそれら全てを巻末Aにまとめてある。
読みながらメモ書きも出来るように、行間にも余裕を持たせた。最後にもう一度繰り返すと、本著は、私が、何を、どのように、どうして行い、そして成功したかに重点を置いた。私は半導体事業・半導体製品・半導体市場に基盤があるが、提唱する戦略は、他のビジネスにも有用であるに違いない。本書で述べている内容と法則が当てはまるのは、
・官公庁に働く人たち
・教育委員など、教育関係者
・病院経営者
・ボランティア組織の関係者
・新聞、出版社
・全ての製造業
・会社の役員
・運送業の管理職
・軍隊組織
・研究や開発に関わる人たち
何人かの異なる職種の人たちに原稿を見せたところ、必ずしも経営上層部ではない人たちも興味をもって読んでくれた。例えば、
・意欲的な若い役員クラス
・経営プロセスの「不可解なこと」に心を惹かれる一般社員
・ビジネス界の人物の追想録に興味ある人たち
・問題の山積している仕事場で働く人たち
・新しく会社を始めようと考えている人たち
立場や年齢も異なる多くの方たちに、私が実践し、そしてそれなりの成果を上げることのできた、マネジメントや経営に共通する重要で、しかし決して難しくないやり方をお話したいと思う。