人工知能が飛躍的な進化を遂げている。
人工知能と言われても、映画やアニメの世界の話と思われるかもしれない。わずか数年前まで私が人工知能の話を始めても、SFの話、と受け流されていたに違いない。しかし、今や状況は明らかに変化している。毎日の新聞やネットでは、世界中の人工知能に関するニュースが溢れている。こうした変化は、読者の身の回りにも現れているはずだ。スマートフォンに付いている音声認識型のアシスタント機能や自動掃除ロボットなど、人工知能の技術が活用されている身近な例は多数ある。重要な点は、このような変化が凄まじいスピードで進んでいるということである。そして、人工知能を取り巻く変化が私たちの社会・産業を大きく変えようとしている。すでに世界中で、インターネットと人工知能の導入により、産業システムの大胆な効率化が同時進行中だ。これが、かつて蒸気機関や電力、電子技術がもたらした3次に渡る産業革命に匹敵する、第4次産業革命と呼ばれている技術革新の動きである。私たちの想像を遙かに上回るスピードで世界を駆け巡り、世界を変える、そのような革命が起こりつつある。
現在私が副大臣を務める経済産業省は、通商産業省の時代も含めて、産業界を取り巻く変化を察し、つねに新しい政策を立案してきた。この第4次産業革命に対しても、関係省庁とともに政策の検討を本格的に始めており、本書ではその内容の一端をお示ししたい。政府の仕事は、ビジネス環境の整備である。人工知能を巡るグローバルなルールの整備や倫理の問題は国民的な議論が必要とされる。
また、産業の主役は企業である。日本企業は、これまでも創意溢れる現場力を持って、世界のモノづくりの先頭に立ってきた。第4次産業革命は、数十年に一度の大きな変化であると同時に、世界の産業構造を変えることのできるチャンスでもある。人工知能の動きを静観するか、産官学が一体となって我が国が将来のグローバルな競争に勝ち抜くか、今がその重要な岐路であるように思えてならない。どうか最後まで本書にお付き合い頂き、多くの読者が議論に参加頂ければ、筆者として望外の喜びである。
平成27年8月 経済産業副大臣 山際 大志郎