バブルの崩壊、失われた10年そしてリーマンショックと、不況の中においてさえ経営環境が日々激変する現代において、企業には絶え間ないイノベーションばかりか、時代や環境に応じた不断の変革・再生が求められている。
近年では、米ゼネラル・モータース、日本航空、武富士、ウィルコムと、誰もが知っている企業が再生を必要とする事態に陥っており、企業再生の必要性やその概要が、広く一般に知られるようになってきている。
企業を再生するためには、事業面と財務面の改善をしなければならない。事業面の改善には、劇的なコストダウン、既存ビジネスによる収益力向上、そして新規収益源の確保といった局面があり、これらの局面は、順序良く立ち現われるものではなく、企業再生を成功させるために確保できる短い時間の中で、並行して取り組まれるものとなる。財務面の改善は、自助努力による負債の圧縮の他、借入金のリスケジュール、債権放棄といった債権者からの支援などによって行われ、合併や会社分割などの組織再編手法を活用するケースも増えている。
本書のテーマである知的財産は、これまで企業再生が語られる場においては、あまり注目されてこなかったのが実態である。しかし、知的財産は、現代の企業においては企業価値に占める比率が高く、そのマネジメントの巧拙が業績を大きく左右するものであるため、企業再生を成功に導くためには、事業面、財務面の改善や組織再編などの局面で知的財産の問題を積極的に検討することが不可欠であり、今後その重要性はさらに増すであろう。
本書は、三人の筆者による検討の成果として、従来取り組まれてきた様々な企業再生手法の中に知的財産を位置づけ、企業再生と知的財産との関係について平易に解説するものである。