経済産業省では、平成10年度以降、「電子商取引市場調査」を毎年実施し、電子商取引市場規模を推計し、その推移により拡大する電子商取引の現状を捉えて参りました。また、平成19年度以降は、電子商取引市場規模だけではなく、電子商取引に関連したインターネットビジネス動向の把握に努め、これらの調査の内容をより多くの方々に知っていただくために、同調査結果を「電子商取引レポート」として出版してきました。
人口減少や少子高齢化の進展により国内市場の縮小が懸念される中、我が国企業は海外市場への進出を図ってきているところです。特に、中国をはじめとしたアジア諸国は近年の経済成長が著しく、我が国においても企業の国際展開先の重要な選択肢の一つと考えられています。
また、中国等のアジア諸国では、インターネットの普及とともにインターネットを媒介とした電子商取引市場が形成されつつあります。例えば、中国においては、2010年のインターネット利用者数は4億5,730万人、消費者向け電子商取引市場規模は4,980億人民元に達しており、今後も成長を続けることが見込まれています。
我が国の大企業に関しては、現地法人を設立するなどの方法で海外進出している企業もみられますが、資金や人材等の経営資源等が限られている中小企業の場合には、大企業と同様の方法での海外進出は依然として困難な状況となっています。
そこで、我が国から海外に向けてインターネットを利用して商品を販売する越境電子商取引は、中小企業が比較的少ない費用で地理的な制約を超えて世界市場に自社製品を販売することを可能にするものであり、我が国中小企業の海外進出の手段としての活用が期待されています。
こうした背景のもと、本書に掲載した「平成22年度電子商取引に関する市場調査」では、従来からの日本国内の電子商取引市場規模の推計を継続するとともに、日本政府として初めて、日本・米国・中国の3カ国間の越境電子商取引市場規模を推計しました。併せて、日本・米国・中国のそれぞれにおけるインターネットビジネスの実態に関する調査を行いました。
今回の調査から得られる主要なメッセージを以下に3点紹介します。
(1)我が国における商取引の電子化の進展
(2)中国消費者の積極的な越境電子商取引の利用と市場規模の伸張
(3)日本及び米国とは異なる中国電子商取引利用者に特徴的な行動の存在
2011年3月11日に発生した東日本大震災による被害や、海外消費者の日本製品の買い控え等により、国内電子商取引市場及び越境電子商取引市場においても短期的な落ち込みも見受けられました。その後、民間事業者等の努力により市場は持ち直してきておりますが、当省として更にこの動きを後押しすべく、越境電子商取引に取り組む事業者を応援する情報提供サイトの構築や越境電子商取引を新たに始める事業者への支援等に取り組み、一層の越境電子商取引の活用促進を図り、被災地の持続的な復興・振興に繋げていきたいと考えています。
本書を通じて、少しでも多くの事業者や消費者の方々に電子商取引に興味を持っていただくとともに、インターネット関連ビジネスを行う方々には本書を道標として活用していただくことで、今後の国内及び海外向け電子商取引の発展に向けての一助となれば幸いです。