弊著初版を出版してから、早や4年近くが過ぎました。ご存じのとおり、初版発行以来、韓国特許法は、毎年のように改正されてきました。その中でも特に、2009年1月30日付け法律第9381号として公布された特許法においては、実務的に重要な、つぎのような内容の改正がありました。
第一に、2009年7月1日以降の出願を対象に、拒絶査定を受けた場合、拒絶査定不服審判を請求せずとも補正と同時に再審査を請求することで、同じ審査官により再び審査を受けることができるようになりました。また、再審査請求に対して、拒絶査定が出た場合は、補正の機会がないにもかかわらず、拒絶査定謄本の送達があった日から30日以内に、拒絶査定不服審判と分割出願が可能になりました。このように拒絶査定が出された件に対しては、それが2009年6月30日以前の出願である場合には、従来の審査前置制度を利用しなければならず、一方、2009年7月1日以降の出願である場合には、改正された再審査請求制度を利用しなければならない等、より効率的な特許取得のためには、両制度の実務上の流れの差異を明確に理解する必要が生じました。
第二に、2009年7月1日以降に補正したものを対象に、最後の拒絶理由通知後の補正および再審査請求時の補正(審査前置制度を利用した出願については、拒絶査定不服審判請求日から30日以内に行った補正)において、特許請求の範囲の実質的変更要件および特許要件に係る規定を削除しました。従って、従来、最後の拒絶理由通知等に対して提出した補正書において、外的付加に該当する特許請求の範囲を追加しようとする場合、分割出願によらなければなりませんでしたが、改正特許法においては、特許請求の範囲の減縮等に当たる限り、自由に追加することが可能になりました。また、明細書に軽微な記載ミスがあったとき、その内容を出願人に確認する簡易な方法ですぐに特許登録を受けることができるという職権補正制度を導入いたしました。
なお、その間(2008年〜2011年)、韓国特許庁は、拒絶理由通知に対する意見書提出に関連した期間延長申請の可能な期間を、基本的に最大4ヶ月までに制限しており、出願人が自己の特許戦略に合わせて、審査を受ける時期を選択できる遅延審査、超高速審査制度、それから、専門機関に先行技術調査を依頼する場合、誰でも優先審査を受けることを可能とし、さらに、当事者の一方が相手方の同意を得て、申請書を答弁書提出期間内に提出すれば、迅速審判制度により、審判請求日から4ヶ月以内に審決を受けることができるようにしていました。くわえて、発明の詳細な説明に、出願発明の背景技術を記載することが義務化されました。
このような特許法の改正に足並みをそろえる形で、下位法令である特許法施行令および特許法施行規則だけでなく、審判便覧および審査指針書等も立て続けに改正が行なわれてきました。さらに、機能的クレームに関連した特許請求範囲の要旨認定等に関連した大法院(最高裁)の新しい判断も示されおり、このような内容を、韓国特許実務に携わる日本企業担当者の方々に正しくご理解いただく必要が生じました。
(以下続く...)
韓国 特許法人 和友 事務所にて 弁理士 康 應善