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米国発明法とその背景
―19世紀以来の特許制度改革―
澤井 智毅  著

発行 2012年 7月 6日  A5判 280ページ

本体 2,800円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2895-1

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   内容紹介  イメージ
「特許制度改革に向けた議会でのロング・ジャーニーが始まる(U.S. Patent Reform Begins Long Journey Through Congress)」、権威ある学術誌として知られる米サイエンス誌2005年6月17日号の特集記事の表題である。特許改革法案(Patent Reform Act)の同年6月8日の連邦議会(下院)への上程を受けた記事である。

本書では、米国発明法の主要な規定内容を説明するのみならず、その制度の改正や導入に至る背景に可能な限り頁を割くこととした。なぜ大学の特許には先使用権が主張できないのか、なぜ先発表主義的な内容となったのか、なぜ付与後レビューと当事者系レビューの二段階の異議申立制度としたのか、なぜ訴訟における無効抗弁を制限するのか、なぜ米国では特別会計を産業界が求めるのか等々、改正の背景や審議の過程を見なければ説明がつかないものも少なくない。そこで、多くの議会審議での証言や陳述、議会有力者への書簡などを分析し、限られた誌面の中でこれらを紹介した。また、制度改革に影響を与えた報告書の概要や、改革に深く関与した各業界等の立場にもふれた。19世紀以来の大改革とも称されるだけに、議会審議や関係者との面談の中で、制度の歴史が語られることも少なくない。そこには米国制度への自負も感じた。そこで、建国からの制度の変遷にもふれることとした。

上記の通り、条文を見ただけでは、その解釈が不明確なものも少なくない。これらの法解釈は、今後の規則制定だけでは足らず、将来の司法判断に委ねられる場合もあろう。この際、裁判所は、多くの場合、立法府の意志、すなわち立法趣旨を参酌することとなる。本著に記す制度改革や議会審議の背景や根拠が、立法趣旨を知る手がかりの一つとなれば幸いである。

また、棚卸しともいうべき6年にも及ぶ米国の議論から、特許制度のありようを考えるとき、我々は多くを学ぶことができる。2011年6月、米国の制度改革の動きを端緒に、日本は、第4回日米欧中韓五庁長官会合(於東京)において、はじめて制度調和の議題を提言し、各庁の立場の違いを超えて、その重要性と今後の議論の開始を確認した五庁合意を導いた。世界知的所有権機関(WIPO)での議論が停滞する中、世界の8割超の特許出願を受け付けるこの五庁(欧州各国特許庁受理件数を含む)における制度調和の議論着手の重要性は容易に理解されよう。今般の米国の制度改革の背景を知ることは、我が国として、こうした制度調和の国際的な議論を先導する上で、米国や他国の今後の戦略やこだわりを予想する上でも有効となる。

米国における、20世紀初頭まで続いた大好況時代、そして1980年代から続く知的財産重視政策(プロパテント政策)は、今般の特許制度改革の議論を通じても、いささかも変わりはない。改革を促したナショナル・アカデミー報告書「21世紀の特許制度」においても、80年代以降、高度にイノベーションは継続しているとして、プロパテント政策を評価している。また、「特許制度はイノベーションの礎」であるとの議会審議における多くの有力議員の発言や「特許制度改革により技術革新、経済成長、高所得の雇用に繋がる」とする商務省白書、組織強化や財政強化が一層進む米国特許商標庁など、プロパテント政策が今後も続くことを示唆している。

質の高い特許は権利の安定化と戦略的な権利行使を実現し、訴訟負担の軽減はイノベーションの阻害要因を取り除く。さらに制度調和に資する改正内容は、米国政府に今後の国際的な議論での主導的な役割を担うための資格を与えた。その市場の大きさや知的財産を重視する環境を含め、今後も米国の動向からは目を離すことはできない。米国は、知的財産立国、科学技術立国として、さらなるロング・ジャーニーを続けることであろう。

   著者略歴  イメージ
澤井 智毅(さわい ともき)
1987年筑波大学大学院修了、特許庁入庁。審査官・審判官として特許審査審判業務に従事するとともに、カリフォルニア大学デービス校、特許庁総務課、情報システム課、国際課、調整課等で企画立案・調整業務、国際交渉業務を担当。

2005年日本貿易振興機構ニューヨーク知的財産部長、知的財産研究所ワシントン事務所所長、特許庁に帰任後、2008年情報技術企画室長、2010年審査監理官。

2011年1月より国際課長(経済産業研究所コンサルティングフェロー兼務)。


主要目次
はじめに
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第1章 米国における特許制度の変遷
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第1節 建国とともに歩む特許制度
 1.ワシントン大統領と知的財産制度
 2.ジェファーソンと特許法
 3.無審査制度による弊害と特許庁の誕生、大好況時代

第2節 大恐慌とアンチパテント
 1.アンチパテント時代の到来
 2.裁判所における高い特許無効化率とバラツキ
 3.特許の信頼と国際競争力の低下

第3節 プロパテント時代の到来
 1.特許重視に動く司法
 (1)連邦巡回控訴裁判所(CAFC)設置
 (2)チャクラバティ最高裁判決
 2.特許重視に向けた立法及び行政的措置
 (1)バイ・ドール法
 (2)ヤングレポート(産業競争力委員会報告書)
 (3)スペシャル301条の新設 
 (4)関税法337条の改正 

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第2章 21世紀の特許制度改革に向けた動き
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第1節 制度改革に向けた主要なプレーヤー
 1.特許権の安定性を求める製薬業界・バイオ業界
 2.特許不実施団体(NPE)問題を抱えるIT業界 
 3.保守的勢力である個人発明家
 4.特許取得と論文発表の両立を求める大学等の研究機関
 5.日米合意の履行を求めた日本政府
第2節 質重視と訴訟軽減、制度調和の要請
 1.連邦取引委員会(FTC)報告書 
 2.ナショナル・アカデミー報告書
 3.2006年大統領経済報告
  (1)知的財産と米国経済、その成長
  (2)知的財産に係る政策課題
  (3)結語
 4.その他の主要な報告書
  (1)NII最終報告書「INNOVATE AMERICA」(パルミザーノレポート)
  (2)ナショナルアカデミー報告書「Rising Above The Gathering Storm」 

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第3章 特許改革法(米国発明法)の成立(19世紀以来の抜本改革)
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経緯
米国発明法の構成
第1節 発明者先願主義の採用
I.先願主義の採用(AIA Sec.3)
 1.改正の背景
  (1)モッシンホフ調査
  (2)産業界・法曹界において先願主義移行が多数意見
  (3)国際交渉の観点から水を差す米政府
 2.制度の概要
  (1)有効出願日の概念を導入
  (2)世界公知・公用の採用
  (3)公然実施、販売の意味
  (4)拡大された先願の地位
  (5)インターフェアレンス手続きの廃止
II.発明由来(デリべーション)手続きの採用(AIA Sec.3)
 1.改正の背景
 2.制度の概要
  (1)審判部における手続き
  (2)訴訟における手続き
III.ヒルマー・ドクトリンの廃止(AIA Sec.3)
 1.改正の背景
  (1)外国人差別
  (2)言語差別
  (3)米産業界・法曹界も改正に同意
 2.制度の概要
IV.新しいグレースピリオド、先発表主義の導入(AIA Sec.3) 
 1.改正の背景
  (1)大学研究者とグレースピリオド制度
  (2)大学関係者によるロビーイング
  (3)先願主義導入に向けた妥協の産物
 2.制度の概要
  (1)発明者等の開示の例外(第102条..A)
  (2)発明者と無関係の第三者の開示の例外(第102条(b)(1)B) 
  (3)拡大された先願の地位の例外(出願人同一等)(第102条(b)(2)AC)
  (4)先発表主義の導入(第102条(b)(2)B)
V.先使用権の拡大(AIA Sec.5)
 1.改正の背景
  (1)先願主義と先使用権、特許法とトレードシークレット
  (2)先使用権の拡大を求める法曹界、産業界
  (3)慎重姿勢を示す米国政府
  (4)先使用権拡大に反対する大学
 2.制度の概要
  (1)先使用の抗弁
  (2)先使用の地理的制限と時期的制限
  (3)抗弁に際しての高い証拠力
  (4)商業的使用の追加的な定義
  (5)冒認の場合の主張の制限
  (6)大学保有の特許に対する先使用権の主張の制限
第2節 特許付与後異議申立制度の導入
I.付与後レビュー制度、当事者系レビュー制度(AIA Sec.6) 
 1.改正の背景
  (1)行政による特許権見直し手続きへの期待
  (2)特許の安定性と異議申立期間の長短を巡る議論
  (3)異議申立の濫用防止策を巡る議論
  (4)二段階の特許付与後異議申立制度
 2.制度の概要
 2.1.特許付与後レビュー制度(AIA Sec.6)
  (1)当事者に限られる申立人適格
  (2)広い取消理由
  (3)限られた異議申立期間
  (4)付与後レビューの開始判断
  (5)訴訟等他の手続きとの関係
  (6)禁反言(エストッペル)の適用
  (7)審判部での審理 (AIA Sec.7) 
  (8)補正の制限
  (9)訴訟に比べ低い申立人による立証責任
  (10)ビジネス方法特許に対する暫定的付与後レビュー(AIA Sec.18) 
 2.2.当事者系レビュー制度(AIA Sec.6)
  (1)付与後レビューと当事者系レビューの共通点
  (2)限られた取消理由
  (3)長い申立期間
  (4)ハードルを高めた当事者系レビューの開始判断
II.情報提供制度の拡大(AIA Sec.8)
 1.改正の背景
 2.制度の概要
  (1)申立人適格
  (2)提出書類
  (3)提供の時期的制限
第3節 訴訟における無効抗弁の制限
I.補充審査制度の導入、ベストモード要件の抗弁制限(AIA Sec.12, 15)
 1.改正の背景
  (1)主観的要素への懸念
  (2)無効抗弁における主観的要素の制限
  (3)Duty of Candor(誠実義務)への挑戦 
  (4)テラセンス事件による司法的解決
  (5)立法上の救済措置となる補充審査制度の新提案
 2.制度の概要
 2.1.補充審査制度(AIA Sec.12)
  (1)権利者にのみ限られる請求人適格
  (2)補充審査の手続き
  (3)再審査の手続き
  (4)補充審査制度の効果
  (5)詐欺行為に対する対応
 2.2 ベストモード要件(AIA Sec.15)
  (1)無効抗弁上のベストモード要件の制限
  (2)仮出願及び優先権効果を得るための先の出願からベトモード要件を除外
第4節 USPTOの組織強化と運用改善 
I.米国特許商標庁の財政改善(AIA Sec.10, 22)
  (長官による手数料設定権限、一般会計への流用禁止規定)
 1.改正の背景
  (1)USPTO長官の料金設定権限の是非 
  (2)一般会計繰り入れ(料金ダイバージョン)への産業界の反発
 2.制度の概要
 2.1.長官による手数料の設定権限(AIA Sec.10)
  (1)7年間の長官への料金設定権限の付与
  (2)極小規模事業体への大幅減額
  (3)電子化手数料の新設
 2.2 特許商標手数料準備基金の設置(一般会計への流用禁止規定)(AIA Sec.22)
II.USPTOの組織強化に向けた取り組み(AIA Sec.23, 24)
 1.財政強化
  (1)米国発明法以前から増加する特許商標庁予算
  (2)米国発明法による一層の財政強化
 2.体制強化
  (1)米国発明法以前から続く審査官大幅増員
  (2)米国発明法による体制強化策
  (3)サテライトオフィスの設置(AIA Sec. 23, 24)
  (4)地位向上による組織強化策
III.審査の適時性確保(AIA Sec.11, 25) 
 1.改正の背景
  (1)3トラック審査制度の検討
  (2)原案を修正し優先審査のみを先行採用
 2.制度の概要
 2.1.優先審査制度(AIA Sec.11)
  (1)手数料
  (2)制限事項
 2.2.重要技術の優先審査(AIA Sec.25)

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第4章 最高裁における司法的解決(eBay事件、KSR事件)
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I.差止め発令の制限
 1.最高裁判決に至る背景
 2.イーベイ(eBay v. MercExchange)事件の概要 
  (1)連邦地裁
  (2)連邦巡回控訴裁判所(CAFC)
  (3)関心を集めた上告審
  (4)最高裁判決
  (5)最高裁判決後の状況
II.非自明性基準の見直し
 1.最高裁判決に至る背景
 2.KSR(KSR International Co. v. Teleflex Inc)事件の概要
  (1)連邦地裁
  (2)連邦巡回控訴裁判所(CAFC)
  (3)連邦最高裁
  (4)米国特許商標庁(USPTO)による審査基準の改定 

資料 米国発明法原文



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