「フロンティア国家」として
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を超克して、新しい日本社会を作り、誰もが「夢と誇りを持てる国」を実現すること。これが東日本大震災と原発事故を経験した私たちに課せられた責務である。そのためには、東日本大震災以前の私たちの社会の在り方、価値観、こうしたものを一から見直す必要がある。
平成22年(2010年)6月に閣議決定した「新成長戦略」は、過去の成功体験にとらわれることなく、「失われた20年」の背景を正確に認識し、強い自覚と反省の上に立って新たな歩みを始めるとの認識に基づいて策定され、始動したものであった。しかし、それから9か月後、私たちは「3.11」に遭遇し、新たな試練に直面した。こ
の新たな状況に対応し、「新成長戦略」を再編・強化し、その取組を被災地の復興につなげることにより、東日本大震災以前よりも魅力的で活力にあふれる国家として再生するために、これから私たちが進むべき方向性を指し示したものが、この「日本再生戦略」である。
日本が世界の中で突出する経済力を誇り、アジアで唯一の先進国という地位が保障された時代はとうの昔に終わっている。今や日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入し、未曾有の災害に遭遇し、さらには原発事故によって深刻なエネルギー制約にも直面している。
私たちは世界に先駆けて様々な困難に直面しており、この困難を乗り越えることで、日本は世界に先例を示すことのできる「フロンティア国家」という新たな立場に立っている。
直面する幾多の困難を、むしろ日本にとってのフロンティアとして捉え、勇気を持って切り拓いていくことで世界に範を示す社会を築いていくことが「日本再生戦略」の目指す目標である。
私たちが直面するフロンティアは、過去に誰も切り拓いたことのない未知の領域である。その開拓には様々な苦難が伴う。しかし、それを乗り越えることが「フロンティア国家」たる日本の責務である。
私たちの先人は、これまでにも幾多の困難を乗り越えてきた。その際、我が国は異質な存在や新たな知識に「開かれた心」をもって「交流」し、様々な能力を組み合わせて「混合」し、無駄なものを削ぎ落としながら「変容」させ、「わび、さび」に象徴される「引き算の文化」のような日本独自の新たな価値を生み出してきたのである。フロンティアを切り拓くに当たっても「温故知新」の姿勢に立ち、私たち自身の中に秘められている日本らしい力を再発見し、活用していくことが重要である。
私たちは「フロンティア国家」としての自覚を持って「日本再生戦略」を実行し、世界に先駆けて新しい経済や社会の姿を日本において実現することを目指していく。