人口増加と経済成長の両立。アジアにおいて実現した若年労働力の拡大と経済の拡大の好循環が、アフリカにおいても実現するかに世界の注目が集まっている。2000年から2010年までの10年間に、アフリカの人口は8.1億人から10.2億人へと増加するとともに、1人当たりGDPは、717ドルから1,667ドルへと拡大した。アフリカ大陸全体の経済規模は、世界の投資を惹き付けて
いるインド経済と同規模にまで発展してきている。この10年の経済成長には、資源価格の高騰が大きく影響をしており、今後、持続的にアフリカ経済が成長を続けていくためには、増加する若年労働力が付加価値のある産業活動に従事していくことが必要となる。アフリカ大陸が資源以外の分野への投資資金を受入れ、若年労働者が様々な事業分野で活動することができるかどうかがアフリカ経済発展の成否を分ける。
本書は、平成24年度に経済産業省貿易経済協力局において実施したアフリカ経済に関する2つの委託調査(「アフリカビジネスに関する基礎的調査」・「アフリカ地域のビジネス展開、インフラ案件形成に向けた海外投融資の活用方策に係る調査」)をもとに、アフリカビジネスの現状と日本企業の事業展開における課題につき整理をしたものである。
第1編では、アフリカの経済概況とともに、アフリカ大陸内において活性化する経済共同体の動きについて俯瞰した。
第2編では、アフリカビジネスの現状について各種データを用い市場別に分析するとともに、46の金融機関へのヒアリングを実施し、アフリカのそれぞれの地域を代表する8ヶ国のビジネス環境を概観した。
第3編では、日本企業50社へのヒアリングにより、アフリカ進出における課題を抽出するとともに、順調に事業を行っている日本企業の事例をパターン別に記載した。
第4編では、アフリカでの事業展開のポイントを「製品・サービス」、「マーケティング」、「人材」の3つの観点から整理した。
拡大するアフリカ市場は、世界からの投資を集め始めているが、資源分野以外への広がりは限定的である。アフリカでは資源ビジネスの活況を背景とした資源運搬用インフラの整備、国全体の経済発展に伴う様々なインフラ整備が進んでいる。また、貧困層から脱し生活の豊かさを楽しむ余裕のある新しい階層が増大しつつあり、収入が増加した人々は、新しく家電製品を購入し、新たな衣服をまとい、また、医療・教育などのサービスへの支出を増大させてきている。
日本企業にとってもアフリカ大陸を事業展開のフィールドとしてしっかりと位置づけていく時期が到来している。本書が、アフリカでの事業展開を検討している日本企業の参考として活用されることを期待したい。
平成25年5月
貿易経済協力局 審議官
波多野 淳彦