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イスラーム圏ビジネスの法と実務
イスラムビジネス法研究会
西村あさひ法律事務所  編著

発行 2014年 7月 28日  A5判 420ページ

本体 3,800円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2937-8

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   「はじめに」 より  イメージ
私は1989年3月アラビア石油の副社長に就任して以来、サウジアラビアとクウェートを中心にイスラーム圏で約20年間いろいろな経験をしてきた。

さらに遡上って1973年10月の第一次石油危機のときは、田中角栄首相の秘書官としてトイレットペーパー騒ぎに象徴される国民生活の混乱、経済活動の停滞等に直面して日本にとって中東が如何に重要であるかを身をもって体験した。

現在は、「アラブの春」の夢こそ砕け散ったものの湾岸産油国、産ガス国の経済成長発展には目を見張るものがあり、イスラーム圏としてみればマレーシア、インドネシアの発展、繁栄には、目を離せない。さらにオイルダラーに着目するとイスラーム金融の生成発展には、注目せざるをえない。

2008年早々、大宮正弁護士からイスラムビジネス法研究会設立の相談を受けた。当時はドバイの急速な経済開発を背景に国際的にイスラーム金融が脚光を浴びていた。また、世界的にも欧米を含めてイスラームの人口が年々増加しつつあること、サブプライムを契機とする世界的金融不安により金融資本主義に対して欧米諸国でも大きな疑念が生じたこと(イスラームは金利には否定的であり、実需裏付けのない金融は認めない。)、アジアの経済発展に伴いイスラーム教徒が多い国との関係でもイスラームへの理解が不可欠になりつつあった時期でもあった。

私自身はイスラムビジネス法に詳しいわけではなく、どれだけ貢献できるか複雑な心境であったが、「世界人口の四分の一を占めるムスリム(イスラーム教徒)の市場の扉を開くためには、イスラームについてもっと多く深く知る必要がある」と判断した。また、今一つの壁に突き当たっている金融が大きな影響力を持つ現代の経済システムもイスラームから何か学ぶものがあるのではないかと思ったりもした。そして「イスラムビジネス法のアウトライン(逐条的議論ではない意味)や宗教的文化的伝統を踏まえたイスラーム社会の基礎知識を得る場としての研究会なら多少お役に立つかも知れない」と答えた。大宮氏からは、「正にそのような趣旨の研究会を考えているので、中東ビジネス経験豊かな先輩に是非参加してほしい。」と言われ、特別顧問を引受けさせていただくこととなった。

本書は、今日(平成26年1月)に至るまで、原則月1回、計54回を重ねた研究会の成果を取りまとめたものである。本書の構成を概説すると、第I部は、エジプトやUAE の大使等を歴任され、イスラーム地域に精通する片倉氏と、最近の中東情勢に最も詳しい外務省の向中東第二課長、そして通産省、アラビア石油を通じてイスラムビジネスに関係した私による寄稿文である。これまでイスラームやイスラーム圏と関係の薄かった読者にも、イスラームの考え方や過去の経済やエネルギー分野での係りについて知的な関心を抱いていただければ幸いである。第II部は、イスラームビジネスの理念について、イスラーム研究者が学術的にまとめている。とはいえ、こうした理念は実際のビジネスにも活かされるものであり、ビジネスマンにとっても有益な知識であることは間違いない。第III部では、より実務的な情報として、実際の制度や法律についての解説を中心に記述されている。第IV部は、イスラームがビジネスという形態で実践されている分野として代表的なイスラーム金融について、実務家、法律家、研究者等によりその詳細を記述している。第V部では、イスラームビジネスのより広範な制度や経済環境について弁護士や官僚によりその実情を紹介している。また、各編の最後には、大使経験者等による日本とイスラム諸国との経済関係の歴史や現状についての解説を加えているが、読者のこの地域に対する理解を一層深めていただく一助となればと願っている。

ここに集録されている論文は、長きに亘りイスラーム圏のビジネスに関与してきた私にとっても、わかり易く、かつ、新しい発見があり、大変な知的刺激を与えてくれたものばかりである。今回出版の運びとなった本書が、今後の中東地域、東南アジア地域等のイスラーム圏における我が国の企業活動や経済協力のお役に立てばと念願している。

イスラムビジネス法研究会 特別顧問 小長 啓一

   執筆者履歴  イメージ
小長啓一(こながけいいち)
1930年生れ。1953年岡山大学法文学部卒、同年通商産業省入省。1972年7月総理大臣秘書官、1984年6月通商産業事務次官、1991年3月アラビア石油株式会社取締役社長、2005年7月(一財)経済産業調査会会長(現任)。2007年弁護士登録。

片倉邦雄(かたくらくにお)
1933年生れ。1960年東京大学法学部卒、同年外務省入省。駐イラン大使館公使(1980-83)、駐UAE 大使(1986-88)、駐イラク大使(1990-91)、国際交流基金専務理事(1992-94)、駐エジプト大使(1994-97)、第2回東京アフリカ開発会議政府代表(1998-99)を歴任の後、外務省退官。大東文化大学教授(1999-2004)。現職:日本エネルギー経済研究所理事、日本イスラム協会理事、片倉もとこ記念沙漠文化財団評議委員会議長。

向賢一郎(むかいけんいちろう)
1967年生れ。外務省中東第一課長。1990年京都大学法学部卒業、同年外務省に入省。シリア及び米国で語学研修後、在エジプト大使館、国際機関第一課、日米安全保障条約課、外務大臣秘書官、国連代表部、在イラク大使館、中東第二課長などを歴任。

福島康博(ふくしまやすひろ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー/立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京生れ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA 課程留学を経て、桜美林大学大学院国際学研究科博士後期課程単位取得満期退学。2014年5月より現職。博士(学術)。

奥田敦(おくだあつし)
1960年生れ。慶應義塾大学総合政策学部教授(法学博士)。同大学SFC 研究所イスラーム研究・ラボ代表、アレッポ大学学術交流日本センター副所長など兼任。専門は、イスラーム法及びその関連諸領域、アラビヤ語教育、ガバナンス論。主著に『イスラームの人権―法における神と人―』(慶應義塾大学出版会、2005年)、『イスラームの豊かさを考える』(中田考と共編著、丸善プラネット、2011年)などがある。

柳橋博之(やなぎはしひろゆき)
1958年生れ。東京大学人文社会系研究科教授。主著に『イスラーム財産法』(東京大学出版会,2012年),A history of the early Islamic law of property(Brill, 2004)がある。

長岡慎介(ながおかしんすけ)
1979年生れ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授。主著『現代イスラーム金融論』(名古屋大学出版会、2011年)、『イスラーム銀行―金融と国際経済』(小杉泰との共著、山川出版社、2010年)。

香田忠維(こうだただつな)
1944年生れ。1967年東京大学教養学部卒、同年通商産業省入省。1995-1998年在オマーン大使、2011-2013年中東協力センター理事長、現在同センター顧問。

富岡幸喜(とみおかこうき)
マディーナ・イスラーム大学(サウジアラビア)卒。アラビア石油リヤド事務所調整役、ジェトロリヤド事務所長、AOC ホールディングスIR 広報部等を経て、現在JX 日鉱日石開発勤務。(宗)日本ムスリム協会理事・教務委員。

田中民之(たなかたみゆき)
1960年京都大学法学部卒、同年より外務省勤務(中東諸国等での研修及び勤務を含む。)。1978年弁護士登録。中東諸国における日本企業の事業活動の法律面での相談を主たる業務とする。

川上嘉彦(かわかみよしひこ)
西村あさひ法律事務所パートナー弁護士(日本及びニューヨーク州)。中東プラクティスチーム代表。東京大学法学部、Harvard Law School 卒業(LL.M.)。専門分野は中東/イスラム取引、不動産、ストラクチャード・ファイナンス、国際金融。

五十嵐チカ(いがらしちか)
西村あさひ法律事務所弁護士(日本及びニューヨーク州)。中東プラクティスチーム。慶應義塾大学法学部、Boston University Law school 卒業(LL.M)。国連本部にて研修。金融機関を含む企業コンプライアンス、国際取引法務、中東関連の法務支援等に従事。

北爪由紀夫(きたづめゆきお)
1950年生れ。1973年東北大学法学部卒。同年通商産業省入省。主としてエネルギー、通商貿易関係の業務に従事。2001年から独立行政法人日本貿易保険理事として中東でのインフラ案件に関与。2007年から2010年までカタール大使。現在、一般財団法人日本航空機開発協会副理事長。

吉田悦章(よしだえつあき)
ハーバード大学留学後、一橋大学卒業。日本銀行にて国際金融業務等に従事した後、国際協力銀行へ。2008年より早稲田大学客員准教授。イスラーム金融に関する著書・論文や内外における国際会議での講演等多数。

斎藤創(さいとうそう)
東京大学法学部、ニューヨーク大学ロースクール卒。西村あさひ法律事務所弁護士/ニューヨーク州弁護士/中央大学専門職大学院国際会計研究科兼任講師。2007年からイスラム金融取引に従事。アジア中東諸国の建設案件等も取扱う。

福田安志(ふくださだし)
1982年中央大学大学院博士後期課程修了。在オマーン外務省専門調査員、中央大学文学部、東京大学教養学部後期課程などにて講師。アジア経済研究所入所(94年)、リヤード、カイロ海外調査員、地域研究センター長などを経て2014年退職。現在は、早稲田大学イスラーム地域研究機構上級研究員・教授。

武藤幸治(むとうこうじ)
現在:立命館アジア太平洋大学名誉教授。東京外国語大学アラビア科卒。日本貿易振興会カイロ所長、ドバイ所長を経て立命館アジア太平洋大学教授(国際経営学部)。著書:「西へ広がるアジア経済」など。

木下宇一郎(きのしたういちろう)
長野県飯田市生れ。1968年一橋大学社会学部卒。職業人生の大半が総合商社とサウジアラビアおよびカタールの民間銀行での勤務で、中東産油国関係の各種業務に従事。その間に培った人脈と経験を基盤として、日本と中東諸国間の理解促進と関係強化に注力している。

小野傑(おのまさる)
西村あさひ法律事務所代表パートナー(中東プラクティスチーム代表)。東京大学法学部卒、1978年弁護士登録。ミシガン大学ロースクールLL.M。東京大学客員教授。ニューヨーク州弁護士。(財)中東調査会特別会員。

松下由英(まつしたよしひで)
西村あさひ法律事務所(中東プラクティスチーム)。東京大学文学部卒、石油公団勤務を経て、慶應義塾大学法科大学院修了、2007年弁護士登録。現在南カリフォルニア大学ロースクールLL.M.留学中。主な取扱い分野は、企業法務、保険、イスラーム圏との海外取引など。

石田康平(いしだこうへい)
西村あさひ法律事務所弁護士(中東プラクティスチーム及びアフリカプラクティスチーム)。東京大学法学部卒、2003年弁護士登録。ミシガン大学ロースクールLL.M、2011年ニューヨーク州弁護士登録。主な取扱い分野は、ファイナンス、エネルギー分野など。

鈴木均(すずきひとし)
東京大学教養学部教養学科卒業、学術博士。1986年4月アジア経済研究所に入所、1989-1991年と1999-2001年の二度テヘランに派遣。専門はイラン・アフガニスタンの地域研究および現代政治。主著は『現代イランの農村都市:革命・戦争と地方社会の変容』(勁草書房、2011年)。

大宮正(おおみやただし)
1967年東京大学法学部卒業、同年通商産業省入省。在イラン大使館(1975-78)、パリJETRO 産業調査員(1981-84)、京都府副知事、商務流通審議官、JETRO 理事(1996-2000)、民間企業を経て、2006年弁護士登録(現在西村あさひ法律事務所)。


主要目次
はじめに/小長啓一

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第I部 イスラーム圏ビジネス序説
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 第1章 サウジアラビア・クウェートとのビジネス体験/小長啓一
 第2章 シャリーアに基づく禁忌・禁止の法社会学的考察/片倉邦雄
 第3章 中東の地殻変動と日本外交/向賢一郎

 資料:ムスリム人口比とムスリム人口(2010年末現在)/福島康博

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第II部 イスラームのビジネス理念
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 第4章 イスラーム法はいかにして経済的自由を支えるのか/奥田敦
 第5章 グローバル市場経済の精神とイスラームの経済倫理/奥田敦
 第6章 イスラーム契約法の基礎/柳橋博之
 第7章 イスラーム法における契約の履行確保について/柳橋博之
 第8章 現代世界におけるイスラーム経済の再興─その知的伝統とダイナミズム/長岡慎介
 第9章 現代イスラーム経済論の新潮流─そのビジョンと挑戦/長岡慎介

 コラム1:グローバル化を目指す日本企業と中東・北アフリカ地域/香田忠維

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第III部 イスラームビジネスの法と制度
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 第10章 ビジネスとイスラーム法/富岡幸喜
 第11章 サウジアラビアの法制度─イスラーム法と実定法/富岡幸喜
 第12章 サウジアラビアの法律・司法制度─最近の司法改革を巡って/田中民之
 第13章 アラブ首長国連邦(UAE)の法制度/川上嘉彦、五十嵐チカ

 コラム2:カタールの現状と同地でのビジネスについて/北爪由紀夫

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第IV部 イスラーム金融─確立されたビジネスの実践事例─
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 第14章 グローバル・イスラーム金融市場の俯瞰/吉田悦章
 第15章 イスラーム金融のスキーム紹介/斎藤創
 第16章 イスラーム金融実務におけるシャリーア審査/吉田悦章
 第17章 サウジアラビアにおけるイスラーム銀行の展開とその課題/福田安志
 第18章 イスラーム金融はなぜ広がるか/武藤幸治

 コラム3:中東湾岸産油国の40年間
  ─第1次オイル・クライシス前年から現在までの驚異的変貌/木下宇一郎

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第V部 イスラーム各国のビジネス環境
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 第19章 サウジアラビア投資環境
  ─外国投資規制の概要・サウジアラビア会社法の実務─/小野傑、松下由英
 第20章 オマーン会社法の実務─会社設立及び運営/石田康平
 第21章 マレーシアにおけるハラール認証制度とハラール食品産業/福島康博
 第22章革命後のイラン:革命・戦争から核問題へ、そして対米関係改善か?/鈴木均

 コラム4:日本イラン交渉史/大宮正


おわりに/吉田悦章
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