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裁判例から見る進歩性判断
高橋 淳  著

発行 2015年 1月 6日  A5判 350ページ

本体 4,000円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2950-7

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   はしがき イメージ
進歩性は、特許法の規定が抽象的である分、その運用は裁判例に依存することになり、判例研究の重要性が極めて高い分野である。個々の裁判例にあっては用語が統一されているわけでもなく、また実質的には同じアプローチであっても異なる位置づけが与えられていたりするために、判決の文言をそのまま追いかけるタイプの研究では、真の裁判例の姿を捉えることは困難である。それにも関わらず、進歩性研究は、技術的な理解を要するため、法学者に敬遠されがちであり、相対的に裁判例の分析が遅れている分野であった。

そのようななか、本書の最大の特徴は、近時の関連裁判例から論理的なモデルを抽出するとともに、そのモデルにおける各種争点の取扱いについて、後知恵防止という観点によりそれを統一的に説明しているところにある。その結果、たとえば、最近、裁判実務において進歩性の要件を否定することが困難となっている理由については、一部の裁判体で引例同士や技術常識と組み合わせることの示唆や動機付けが厳しく求められているところにあるとする見方があるのに対し、本書は、その他にも「主引例適格性」(主たる引例の選択の容易性)と、「容易性」(引例の組み合わせ等が容易であるか)と区別されるところの「想到性」(引例の組み合わせ等により対象発明と同一の構成となるのか)の判断の厳格化にも原因があることを明らかにしている。

もちろん、後知恵防止を強調する近時の裁判例の説明概念として本書が考案したモデルに対しては、特許制度における進歩性の取扱いはいかにあるべきかという観点から、本書とはまた別の(裁判例の説明概念としては劣るかもしれないが)講学上のモデルが開発されることが望まれよう。しかし、いずれにせよ、今後の進歩性研究は、好むと好まざるとに関わらず、本書の提示したモデルを避けることはできなくなった。その意味で、本書の登場により進歩性研究は新たな段階に突入したといえる。

実務家はもとより、特許法の研究者にも勧めたい好著である。

北海道大学大学院法学研究科教授 田村 善之

   刊行の狙い イメージ
進歩性は特許出願に対して特許を付与するための要件の一つである。特許法(以下「法」)は、進歩性の判断についての規定を持つが 、その判断手法等については明文がない。従って、進歩性の判断については、特許法の目的を参酌しつつ、判断基準の明確化・客観化という観点から考察する必要がある。特に、発明は、完成後の技術水準に照らせば、「容易に思いつく」ように見えるものであり、かかる後知恵を避けるための仕組みも必要である。

近時、知財高裁の進歩性の判断は、精緻化しており、従来であれば進歩性が否定されていたと思われる事案で進歩性が肯定される(容易想到性が否定される)例が相次いでいる。その原因は、動機付けの有無の判断(容易性の判断)の厳格化のみならず、主引例適格性の判断及び想到性の判断の厳格化にあることは意外に知られていない。

本書は、このような認識の下、裁判例の検討を通じて、容易性の判断(動機付けの有無の判断)のみならず、主引例適格性の判断及び想到性の判断についても検討し、実務に有益な情報を提供することを目的とする。

弁護士 高橋 淳

   著者略歴 イメージ
**先生近影 高橋 淳(たかはし じゅん)

1995年:司法試験合格
1998年:弁護士登録
2003年:日弁連知的所有権委員会(現:日弁連知財センター)委員に就任
2005年:経済産業省主催の「営業秘密の適正管理のあり方に関する研究会」の委員に就任
2005年:特許庁工業所有権審議会臨時委員に就任
2008年:日弁連知財センター委員に就任
2011年:高橋法律特許事務所設立
同年:Law Asia Coferencelにて模倣品対策について講演
2014年:法律特許事務所フラッグを共同設立
同年:Law Asia Coferencelにて職務発明の改正動向等にについて講演

主要著書:
「進歩性の判断II」知財ぷりずむ2011年6月号
「特許侵害と損害賠償」知財ぷりずむ2011年7月号
「職務発明における相当の対価」知財ぷりずむ2011年10月号
「不当利得・損害賠償論」知財ぷりずむ2011年10月号
注解特許法(共著)
コンメンタール不正競争防止法
他多数


主要目次
推薦の言葉
刊行の狙い
参考文献

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第1章 理論編
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1 進歩性の基本的な判断手法
 1−1 法29条2項の構造
 1−2 概要
 1−3 相違点の克服―論理付け・動機付けの有無
2 「想到性」と「容易性」
 2−1 容易想到性
 2−2 容易想到性の二つの段階
3 「想到性」の判断
 3−1 関連裁判例
  3−1−1 通気口フィルター事件判決(平成22年(行ケ)第10214号)
  3−1−2 タービン事件判決(平成23年(行ケ)第10258号)
 3−2 「想到性」判断の特徴
  3−2−1 事実認定の問題
  3−2−2 引用発明の認定と技術常識
  3−2−3 想到性判断と設計事項
 3−3 「想到性」判断の客観性の確保
4 「容易性」の判断
 4−1 スリー・ステップ・テスト
 4−2 課題の発見の非容易性と発明の「容易」性
  4−2−1 発明の本質との関係
  4−2−2 総合判断の可否
  4−2−3 関連裁判例
  4−2−4 小括
 4−3 主引例の選択の問題(「主引例適格性」の問題)
  4−3−1 主引例の選択の容易性
  4−3−2 主引例適格性の基礎付け
 4−4 相違点の克服
  4−4−1 関連裁判例
  4−4−2 総合判断
 4−5 「容易性」判断の客観性の確保
5 事後分析判断の回避のための留意点
 5−1 関連裁判例
  5−1−1 回路用接続部材事件判決(平成20年(行ケ)第10096号)
  5−1−2 キシリトール事件判決(平成20年(行ケ)第10096号)
  5−1―3 切換弁事件判決(平成20年(行ケ)第10121号)
  5−1―4 エァセルラー緩衝シート事件判決(平成20年(行ケ)第10153号)
 5−2 検討
 5−3 事後分析的判断の具体例
  5−3−1 不活性化装置事件判決(平成25年(行ケ)第10163号)
  5−3−2 臀部マッサージ器事件判決(平成25年(行ケ)第10092号)
6 概念の整理
 6−1 「先行技術」と技術常識
 6−2 慣用技術
  6−2−1 「慣用技術」と「周知技術」の相違
  6−2−2 関連裁判例
 6−3 設計(的)事項
  6−3−1 設計事項の意味
  6−3−2 関連裁判例
7 動機付けを基礎づけるもの
 7−1 動機付けとしての示唆
 7−2 動機付けとしての技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性
 7−3 ユーザーのニーズに対する対応
 7−4 技術常識等
 7−5 間接事実からの推認(二次的要因の考慮)
 7−6 動機付けを阻害するもの
 7−7 発明の効果の位置づけ
8 対象発明の認定
 8−1 「発明の要旨」と「発明の技術的範囲」
 8−2 クレーム解釈の考慮要素
  8−2−1 特許法70条(特許発明の技術的範囲)
  8−2−2 クレーム解釈の考慮要素
  8−2−3 「用語」の有する通常の意味
  8−2−4 発明の詳細な説明の記載
   8−2−4−1 リパーゼ判決の提起した論点
   8−2−4−2 検討
  8−2−5 出願時の技術常識
  8−2−6 出願経過における陳述
   8−2−6−1 クレーム解釈の考慮要素としての出願経過における陳述
   8−2−6−2 出願経過禁反言の原則
   8−2−6−3 陳述の採否の要否
  8−2−7 参考裁判例
   8−2−7−1 電話番号自動作成事件(平成21年(ワ)第32515号)
   8−2−7−2 切り餅事件(平成23年(ネ)第10002号)
 8−3 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム
  8−3−1 適法性・許容性
  8−3−2 クレーム解釈
   8−3−2−1 ナトリウム判決(平成22年(ネ)第10043号)
   (平成24年1月27日判決)の内容
   8−3−2−2 検討
 8−4 機能クレーム(ないし機能的クレーム)
  8−4−1 機能クレームの特殊性
   8−4−1−1 機能クレームの意義
   8−4−1−2 「広すぎるクレーム」
  8−4−2 機能クレームの解釈
   8−4−2−1 特別な理論の要否
   8−4−2−2 機能クレーム特有の問題
  8−4−3 機能クレームと記載不備
   8−4−3−1 明確性要件とサポート要件
   8−4−3−2 検討
   8−4−3−3 関連裁判例(図形表示装置事件東京地裁判決)
          (東京地方裁判所平成15年(ワ)第23079号)の検討
  8−4−4 機能的クレームと容易想到性判断
   8−4−4−1 魚掴み器事件判決
          (東京地方裁判所平成21年(ワ)第34337号)
   8−4−4−2 盗難防止用パソコン連結具事件判決
          (平成24年(ネ)第1009号及び平成25年(行ケ)第10033号)

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第2章 裁判例分析編
━━━━━━━━━━
第1 裁判例
1 回路用接続部材判決(平成20年(行ケ)第10096号)
 1−1 事案の概要等
 1−2 判旨
  1−2−1 後知恵排除を意識する一般論(下線付加。以下同じ)
  1−2−2 具体的適用
 1−3 考察
  1−3−1 後知恵排除を意識する一般論について
  1−3−2 具体的適用について
2 キシリトール事件判決(平成20年(行ケ)第10096号)
 2−1 事案の概要等
 2−2 判旨
  2−2−1 後知恵排除を意識する一般論
  2−2−2 具体的適用
 2−3 考察
  2−3−1 一般論について
  2−3−2 具体的適用について
3 切換弁事件判決(平成20年(行ケ)第10121号)
 3−1 事案の概要等
 3−2 判旨
  3−2−1 後知恵排除を意識する一般論
  3−2−2 具体的適用
 3−3 考察
  3−3−1 一般論について
  3−3−2 具体的適用について
4 エァセルラー緩衝シート事件判決(平成20年(行ケ)第10153号)
 4−1 事案の概要等
 4−2 判旨
  4−2−1 後知恵排除を意識する一般論
  4−2−2 具体的適用
 4−3 考察
  4−3−1 一般論について
  4−3−2 具体的適用について
5 手もみ機能付きマッサージ機事件判決(平成20年(行ケ)第10345号)
 5−1 事案の概要
 5−2 判旨
  5−2−1 相違点2についての容易想到性の判断の誤り
  5−2−2 相違点1についての容易想到性の判断の誤り
 5−3 考察
6 球技用ボール事件判決(平成22年(行ケ)第10162号)
 6−1 事案の概要等
  6−1−1 事案の概要
  6−1−2 本件発明の内容
  6−1−3 引用発明の内容
  6−1−4 相違点
 6−2 判旨
 6−3 考察
7 鉄骨柱の建入れ直し装置事件控訴審判決
 (平成21年(ネ)第10028号、平成20年(ワ)第19469号)
 7−1 事案の概要
 7−2 判旨
 7−3 考察
  7−3−1 地裁の判旨
  7−3−2 検討
8 オキサリプラティヌム事件判決(平成22年(行ケ)第10122号)
 8−1 事案の概要
 8−2 判旨
 8−3 考察
9 エレベータのトラクションシーブ事件判決(平成22年(行ケ)第10110号)
 9−1 事案の概要等
 9−2 判旨
 9−3 考察
10 横型MOS半導体装置(平成22年(行ケ)第10165号)
 10−1 事案の概要
 10−2 判旨
 10−3 考察
11 エネルギー管理方法事件判決(平成22年(行ケ)第10268号)
 11−1 事案の概要
 11−2 判旨
 11−3 考察
12 バッチ配送システム判決(平成21年(行ケ)第10432号)
 12−1 事案の概要
 12−2 判旨
 12−3 考察
13 着色材料事件判決(平成24年(行ケ)第10101号)
 13−1 事案の概要等
 13−2 判旨
 13−3 考察
14 マンホール工法(平成22年(行ケ)第10023号)
 14−1 事案の概要
 14−2 判旨
 14−3 考察
15 臀部マッサージ器事件判決(平成25年(行ケ)第10092号)
 15−1 事案の概要
 15−2 判旨(相違点1の判断について)
 15−3 考察
16 盗難防止用連結具事件判決(平成25年(行ケ)第10033号)
 16−1 事案の概要
 16−2 判旨
 16−3 考察
  16−3−1 容易想到判断
  16−3−2 サポート要件違反(補足)
17 人工関節事件判決(平成25年(行ケ)第10053号)
 17−1 事案の概要
 17−2 判旨
 17−3 考察
18 制電性多機能カーペット事件判決(平成24年(行ケ)第10361号)
 18−1 事案の概要
 18−2 判断(容易想到性)
 18−3 考察
19 図書管理方法事件判決(平成24年(行ケ)第10038号)
 19−1 事案の概要
 19−2 判断
 19−3 考察
20 核酸増幅法事件判決(平成24年(行ケ)第10377号)
 20−1 事案の概要
 20−2 判旨
 20−3 考察
21 ヒートセル事件判決(平成21年(行ケ)第10179号)
 21−1 事案の概要
 21−2 判旨
 21−3 考察
22 AV表示システム事件判決(平成21年(行ケ)第10081号)
 22−1 事案の概要
 22−2 判旨
 22−3 考察
23 再帰反射シート事件判決(平成19年(行ケ)第10095号)
 23−1 事案の概要
 23−2 判旨:相違点1の容易想到性判断の誤り
 23−3 考察
24 膨張弁事件判決(平成22年(行ケ)第10184号)
 24−1 事案の概要
 24−2 判旨:相違点2の容易想到性について
 24−3 考察
25 燃料電池事件判決(平成19年(行ケ)第10007号)
 25−1 事案の概要
 25−2 判旨
 25−3 考察

第2 まとめ

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第3章 資料編
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判例索引



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