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改訂版職務発明規定変更及び相当利益決定の法律実務
高橋 淳  著

発行 2016年 4月 15日  A5判 260ページ

本体 2,800円(+税)  送料 実費

ISBN978-4-8065-2974-3

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   推薦の言葉 イメージ
 職務発明に関する訴訟が頻発するなか、2004年改正特許法35条は、従業員と会社の間の自治的な解決を重視することで問題に対処しようとした が、より抜本的な解決を求める経済界からの声がそれで収まることはなかった。しかし、再度着手された改正作業では利害関係団体等の意見が激しく対立し、結局、2015年に成立した特許法35条の再改正は彌縫策を講じるに止まっている。

 本書は、かかる改正法の制約の下で、可能な限り、イノベーションを適度に促進し産業の発展を図るという特許法の趣旨に即した解釈を構築することを試みている。特許法35条に関する主要な学説、裁判例に加えて、経済学や労働法の知見を動員したうえでの本書の主張の骨子は以下の3点にまとめることができよう。第一に、すでに2004年改正によって、従業員と企業との間で解決が図られた補償金額に関しては、裁判所はその算定にいたるプロセスは審査できるに止まり、具体的な金額の多寡を参酌することは許されなくなっている(「自主性尊重説」)。第二に、さらに2015年改正によって、「対価」ではなく「利益」に改められた以上、金銭的な補償金を与える以外にも多様な報奨の選択肢が企業に与えられている。第三に、そもそも35条は、現在、裁判例の趨勢を占めている実績補償ベースでの報奨ではなく、一括払い方式による報奨を許容しているはずであり、多大な利益を上げた発明に関与することができた者以外の発明者や、発明者以外のイノベーションに携わる他の従業者等にも配慮しながら、リスク等を考慮した一括払い方式を採用するほうがイノベーションにとって有効打となりうる、という。

 他方で、本書は、かかる理想的な解釈論を踏まえつつも、現場の企業に対して改正法下での実践的な方策を授けることを最終的な目的としている。そこでは、過度に自身の理想の解釈論に囚われることなく、改正特許法35条下で想定される様々な論点に関して、具体的な提言をなすことを試みている。すでに現場で用いられている実績補償ベースの発明規程等を、一括払い方式等に改める際に留意しなければならない労働法的な配慮にも紙面が割かれていることも特徴的である。

 本書は、特許法がイノベーションに対する適切なインセンティヴを供給することを目的とするとした場合の一貫した解釈論を示すとともに、実務的な処理を志向するものとして、大いに参考にされるべきものといえる。ここに推薦する次第である。

北海道大学大学院法学研究科教授 田村 善之

   はしがき よりイメージ
 現行の職務発明制度が深刻な問題を有していることは、現行法改正直後から指摘されており、更なる改正を求める動きがあったが、第2次安倍政権が誕生し、産業競争力強化の観点から、現行の職務発明制度を見直すことが閣議決定されて後、改正に向けての動きが加速した。

 特許制度小委員会における議論を経て、昨年7月、職務発明制度に関する改正法(以下、改正された特許法を「改正特許法」)が成立し、本年4月1日に施行されることが確定した。

 筆者は、職務発明制度に関心を持ち、セミナー及び原稿執筆等を通じて利害の異なる多数の方々と意見を交換することができた。その集大成として、平成26年5月に「職務発明規定変更及び相当対価算定の法律実務」を出版することができた。

 同著は、筆者の予想を超えて多数の読者に恵まれたが、今回の改正に伴いアップデートの必要性が生じている。特に、改正特許法において、「相当の対価」が「相当の利益」に変更されたという点を踏まえ、タイトルを含めて、全面的に見直すことにした。本書は、実務の傍ら、一気呵成に書き上げたものであり、思わぬ誤りがあることをおそれるが、他方、早期に改正特許法下における実務を解説した書籍を提供することには一定の意義があると思料している。

 もっとも、ガイドライン案公表から間がないこともあり、憶測も含めて様々な情報が飛び交っているのが現状である。従って、職務発明の実務担当者としては、引き続き、セミナー及び書籍等による情報収集を怠らない ことが重要である。

弁護士 高橋 淳

   著者略歴 イメージ
**先生近影 高橋 淳(たかはし じゅん)

1995年:司法試験合格
1998年:弁護士登録
2003年:日弁連知的所有権委員会(現:日弁連知財センター)委員に就任
2005年:経済産業省主催の「営業秘密の適正管理のあり方に関する研究会」の委員に就任
2005年:特許庁工業所有権審議会臨時委員に就任
2008年:日弁連知財センター委員に就任
2011年:高橋法律特許事務所設立
同年:Law Asia Coferencelにて模倣品対策について講演
2014年:法律特許事務所フラッグを共同設立
同年:Law Asia Coferencelにて職務発明の改正動向等にについて講演

主要著書:
「進歩性の判断II」知財ぷりずむ2011年6月号
「特許侵害と損害賠償」知財ぷりずむ2011年7月号
「職務発明における相当の対価」知財ぷりずむ2011年10月号
「不当利得・損害賠償論」知財ぷりずむ2011年10月号
注解特許法(共著)
コンメンタール不正競争防止法
他多数


主要目次
推薦の言葉
はしがき
参考文献

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第1章 現行制度の概要
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1 現行制度の概要
2 旧法35条の構造
3 旧法下の裁判例に対する評価
4 現行特許法35条の構造
5 現行特許法35条の特徴
6 特許法35条を巡る誤解
 6−1 旧法35条の趣旨
 6−2 職務発明規定の強行規定性
 6−3 オリンパス最高裁判決の射程範囲
  6−3−1 事実関係
  6−3−2 オリンパス最高裁判決の射程範囲
7 現行法の問題点
8 現行法の解釈論
 8−1 手続重視の思想
 8−2 プロセス審査説
 8−3 自主性尊重説
  8−3−1 自主性尊重説の骨子
  8−3−2 自主性尊重説とプロセス審査説との比較点

━━━━━━━━━━━━
第2章 現行制度の問題点
━━━━━━━━━━━━
1 標準的な相当対価の支払方式
2 実績補償方式の問題点
 2−1 イノベーションに貢献していない
  2−1−1 インセンティブ・モデルと成果主義
  2−1−2 成果主義の導入と批判
  2−1−3 「発明」の動機付け
 2−2 実績補償方式と所得格差
 2−3 リスクとリターンの歪み
 2−4 他の従業員との公平
 2−5 他の発明者との公平
 2−6 基礎研究の軽視
 2−7 「和」の精神の崩壊
 2−8 過大な事務負担
3 イノベーションの特質に合致しない
 3−1 偶然性に左右される
 3−2 成功の後に失敗あり

━━━━━━━━━━━━
第3章 改正特許法の検討
━━━━━━━━━━━━
1 はじめに
2 改正経緯
 2−1 改正への動きの出発点
 2−2 現行法の問題点
 2−3 改正のポイント
 2−4 改正に至る動き
  2−4−1 二度の閣議決定
  2−4−2 職務発明制度に関する調査研究委員会による調査研究
   2−4−2−1 概要
   2−4−2−2 本調査研究の内容
   2−4−2−3 特許財産制度小委員会における議論の流れ
   2−4−2−4 二度の断絶
3 論点の整理
 3−1 議論の簡単な整理
 3−2 権利の帰属について
 3−3 請求権の廃止について
4 改正特許法35条の検討
 4−1 改正35条特許法の構造
 4−2 法人原始帰属
  4−2−1 事前取得規定とは何か
  4−2−2 法人原始帰属を選択すべきか
  4−3 相当の利益
  4−3−1 相当利益請求権の趣旨等
  4−3−2「経済上の利益」という歯止め
  4−3−3 判断基準
  4−3−4 具体例の検討
 4−4 調整手続
  4−4−1 協議開始のタイミング
  4−4−2 協議等の在り方
  4−4−3 新入社員との協議
 4−5 司法審査の限界
  4−5−1 現行法下の学説―プロセス審査説
  4−5−2 検討―自主性尊重説
5 決定方式及び留意点
 5−1 決定方式
  5−1−1 金銭の場合
  5−1−2 金銭以外の場合
 5−2 「補償」という文言ではなく「報奨」という文言を採用すること
 5−3 実績補償方式の採用には慎重を期すべきこと
 5−4 異議申立手続
6 ダブルトラックの回避
 6−1 個別同意方式と特別協議方式
 6−2 有効性の検討

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第4章 制度設計の基本的視点
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1 会社の実情にマッチする制度設計
2 過大な労力・負荷の削減
 2−1 具体的決定プロセスのシンプル化
 2−2 裁判例の見解との整合性
3 相当利益決定手続
 3−1 評価と検証
 3−2 異議申立手続における留意点
  3−2−1 構成員
  3−2−2 評価と検証
  3−2−3 クレーム対応
4 職務発明規定整備と職務発明訴訟
5 発明者の認定
 5−1 基本的考え方
 5−2 裁判例の傾向
6 相当利益請求権の趣旨
 6−1 利益配分説vsインセンティブ説
 6−2 検討
7 相当利益請求権の法的性質
 7−1 発生根拠
 7−2 内実

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第5章 相当利益の決定方式
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1 決定方式
2 実績補償方式
 2−1 内容
 2−2 出願補償金・登録補償金の位置づけ
 2−3 上限の設定
 2−4 実績補償方式に基づく計算
  2−4−1 自己実施の場合の計算方法
  2−4−2 実施許諾(ライセンス)の場合
  2−4−3 併用型の場合
 2−5 「実績」の決定期間
 2−6 実績報奨方式(逆累進方式)
  2−6−1 貢献度の観点からのアプローチ
  2−6−2 インセンティブの観点からのアプローチ
  2−6−3 事業化促進の観点からのアプローチ
 2−7 決定式の例
3 一括払い方式
 3−1 出願時一括払い方式
  3−1−1 適法性
  3−1−2 決定方法
 3−2 登録時一括払い方式
 3−3 実績考慮型一括払い方式
4 一括払いプラス実績による調整方式
 4−1 内容
 4−2 調整方式
5 一括払い方式のインセンティブとしての有益性
 5−1 ドイツの実情
 5−2 行動経済学・労働経済学の知見
6 発明の価値評価の限界

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第6章 職務発明規定の変更手続
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1 職務発明規定の法的性質
2 職務発明規定の変更要件
 2−1 特許法35条5項が規定する合理性
 2−2 就業規則の不利益変更
  2−2−1 労働契約法
  2−2−2 判例法理と法の手続化
  2−2−3 最高裁判決
   2−2−3−1 第四銀行事件判決
   2−2−3−2 みちのく銀行事件判決
   2−2−3−3 羽後銀行事件判決
  2−2−4 ノイズ研究所事件判決
 2−3 労働協約による労働条件の不利益変更
  2−3−1 労働協約の意義、方式等
  2−3−2 労働協約による労働条件の不利益変更の可否
3 推奨手続
 3−1 5項の文言
 3−2 推奨手続を示す意義
 3−3 開示
  3−3−1 開示の方法
  3−3−2 基準の社外への公表
 3−4 説明の内容
 3−5 説明の方法
 3−6 説明会のメンバー
 3−7 デュープロセス
 3−8 所要時間
 3−9 質疑応答
 3−10 同意の取得
 3−11 代表者・代理人との協議
 3−12 労働基準法との関係
4 従業員の納得を得るポイント
 4−1 変更の必要性の十分かつ誠実な説明
 4−2 代償措置の採用
 4−3 相当の利益の意味合い
5 少数反対者に対する対応
 5−1 対応方法(配置転換又は黙示の同意)
 5−2 配置転換についての考え方
6 新入社員・中途採用社員・退職者との協議
 6−1 新入社員・中途採用社員との協議
 6−2 退職者との協議
7 記録保管
8 実績補償方式から一括払い方式への変更
 8−1 原則としての一括払い方式
 8−2 検討例

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第7章 実務的問題点・留意点
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1 退職者の取り扱い
 1−1 追跡を不要とする措置
 1−2 誓約書の取得
 1−3 職務発明規定変更時の協議の対象となるか
2 ノウハウ(未出願発明)の取り扱い
 2−1 営業秘密として管理する場合
 2−2 営業秘密として管理しない場合
3 無効理由を包含する発明
 3−1 基本的考え方
 3−2 自己実施の場合
 3−3 実施許諾の場合
4 グローバル化対応
 4−1 基本的考え方
 4−2 対応
5 出向社員による発明
 5−1 特許法35条における「使用者等」
  5−1−1 「出向」の意味
  5−1−2 「使用者等」の意味
 5−2 職務発明規定の適用
6 派遣社員による職務発明
7 取締役による職務発明
 7−1 支払いの必要性
 7−2 利益相反取引
  7−2−1 利益相反取引該当性
  7−2−2 承認なき譲渡の効果
8 変更の遡及適用の可否
 8−1 問題点
 8−2 解決策
  8−2−1 清算金の支払い等による個別合意
  8−2−2 変更を予定する「権利」(弱い権利)説
9 事情変更手続規定
10 消滅時効
 10−1 消滅時効期間
 10−2 消滅時効の起算点
 10−3 時効中断(債務の承認)
  10−3−1 支払金員の性質
  10−3−2 不足額の存在の認識
 10−4 援用権の喪失
11 共同発明者間の貢献度の認定

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書式例
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 職務発明規定(一括支払型)
 職務発明規定(実績報奨型)
 職務発明改正マークアップ版
 職務発明ガイドライン案
 A株式会社職務発明取扱規程(案)
 同意書・委任状



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