国民生活や産業活動の基盤となるエネルギーを、低廉かつ安定的に確保しながら効率的に利用し続けていくためには、常に国内外のエネルギー情勢の変化を見極め、適切な対応をしていかなければなりません。この度のエネルギー白書では、我が国のエネルギーを取り巻く状況を、特に3 つのトピックを通じて紹介しています。
まず、現在のエネルギー政策全体の転換点となった、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故からの福島復興の進捗状況を整理しています。また、再生・復興を一層加速していくための、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」の閣議決定、「福島復興再生特別措置法」と「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」の改正等、今後さらに重点的に取り組んでいくべき施策についても説明しています。
次に、エネルギー基本計画及びエネルギーミックスを踏まえて、3E+S を実現する政策について、「エネルギーセキュリティの強化」、「環境制約と成長を両立する省エネルギー・再生可能エネルギー政策」、「競争活性化と自由化の下での公益的課題への対応」の3 つの枠組みに沿って、その背景や理念を整理しています。
最後に、我が国でも電力・ガス市場の自由化が本格的に始まった中で、自由化などで先行する欧米の企業の例を中心に、エネルギー産業の動向について整理を行っています。とりわけ、欧米の電力・ガス分野の企業について、市場の変化、制度の変化、技術の革新等に対応して、積極的な国外展開や市場の垣根を越えた相互参入、新技術への戦略的な投資の事例などを紹介しています。我が国のエネルギー企業においても、予測困難な様々な変化に対し、的確かつ迅速に事業の形を変容させていくことが必要になっていくと考えられます。
経済産業省は、我が国のエネルギーに関する諸課題に真摯に向き合い、引き続き、責任あるエネルギー政策の推進に全力で取り組んでまいります。本白書が、我が国のエネルギー企業にとって新たな展望を描くきっかけとなり、また国民の皆様がエネルギーの現状や課題への理解を深める一助としていただくことを祈念し、本白書の巻頭言の結びとさせていただきます。
平成29年6月
経済産業大臣 世耕弘成