一つの出願で多数の国や地域において出願日を確保できるPCT出願に関して詳細に解説!
PCT出願は、一つの出願で多数の国や地域において出願日を確保できる有用な制度であります。しかしながら、多数国に向けたPCT出願であっても、明細書は出願毎に1つしか提出できません。いずれの国においても、補正は出願時の明細書を基礎とし、新規事項追加は許されません。この意味で、PCT出願明細書の作成は「一回勝負」であります。しかしながら、現実の審査・訴訟は各国毎に実務が異なります。このため、各国移行後の審査で迅速に権利化でき、訴訟でも適切な技術的範囲を確保できるような明細書を作成することは難しい。
本書では、PCT条約および規則、各国の法令・審査基準・裁判例等を踏まえつつ、単一の明細書で各国での審査・訴訟に適切に対応できるように、明細書が備えるべき共通条件を抽出し、実務上の指針とすることを目標としております。
初版が出版されてから6年が経過し、その間、各国では法改正、審査基準の改訂等があり、また多くの裁判例も出ております。増補改訂版では、実務上の影響が大きいと思われるこれらの情報をなるべく収集し、盛り込みました。また、特許実務は、発明の類型(機能的に表現される発明、ソフトウェア関連発明、用途発明、選択発明・数値限定発明等)毎に特徴的な論点があり、それぞれの類型ごとに各国の実務もまた多様であることから、増補改訂版では、新たに追加した第3部において、それら発明の類型別に、各国比較を行い、PCT出願明細書が備えるべき要件について検討しております。実務者の座右の書として活用いただける一冊です。