知的財産価値評価を必要とする様々な局面の評価実務を解説
評価実務全般を網羅した決定版的一冊!
知的財産は一物多価であり、評価目的、評価局面、知的財産の種類、知的財産を活用する主体のガバナンス、評価時点、経営環境などによって実務上求められる価値は異なるものであります。このように不安定な知的財産を有効に活用して更なる進歩・発展をさせるために役立つ知的財産価値評価をするには、法律、技術、会計、経済、経営などに関する学術的な知識と、常に変化する産業活動における様々な現象に対応する適正な判断力が要求されます。そのため知的財産の価値評価は実務的には難しい業務であるとされてきました。
これまで多くの学者や研究者や専門家などにより「知的財産の価値評価」に関する論文やリポートや解説著作物などは数多く公表されております。いずれも価値評価の実務を行なう評価人にとって、示唆に富んでいたり参考になるものでありますが、それらは具体的な特定の条件下で有効活用できるものであったり、会計学的視点から資産価値として財務情報との整合性を重視するものが多かった。そのため事業における実績評価を明らかするには向いているが、将来価値を予測するには必ずしも向いているものは少なく、経営戦略に基づく将来の目的や目標を達成するための参考資料としては、必ずしも有効に活用されていないというのが実情であります。
本書は、学術的に新しい知的財産の価値評価手法や新しい価値評価理論の開発や研究成果を目指したのではなく、実務家として、これまで研究者や諸先輩の方々がこれまで研究・開発し、蓄積してきた価値評価手法や価値評価理論を基本として、これに知的財産の個別的特性や事業への戦略的活用特性などを加味し、どのようにしたら企業価値の最大化と社会のイノベーションに役立つ知的財産価値評価書を作成できるか、また、経営者や取引者や投資家・金融機関などのステークホルダーは、この知的財産価値評価を所定の目的達成のためにどのような点に留意して活用すべきかを目指したものであります。
また、知的財産の価値評価は、利用者の目的に対する意思決定や次のアクションを起こすための参考資料となるものであることに鑑み、知的財産に具体的「値付け」をして資産価値を明らかにするというだけでなく、知財権利化業務の各局面や、事業戦略策定や研究開発戦略策定や知財紛争対応戦略など、極めて多様な局面において必要とされるものと考えます。このような視点から本書では、様々な局面においても知的財産の定性評価を重視して、利用者の目的達成に役立つような戦略的な知的財産価値評価の実務を目指したものであります。